はめ殺し窓 向田邦子
- 2020/06/24
- 16:45

異動で閑職となった江口は、くたびれた家の2階をふと見上げると、“はめ殺し窓”から、自分の母親のタカそっくりになった、一人娘の律子がのぞいていたのに気がついた。一番似てほしくない人間にますます似てきた…。江口は娘の姿を見て、5年前に亡くなった生前のタカの姿を思い浮かべてゆく。痩せて貧相な父に対し、母タカは背が高く、美貌の持ち主であった。しかも、父以外の男性とも関係が…。嫉妬に苦しんだ父の人生。父の二の舞...
マタギ奇談
- 2020/05/27
- 10:13

マタギたちが経験した山での不思議な経験を、長年にわたって取材、書き下ろした実話譚。第一章 歴史のはざまで マタギが八甲田で見た人影はなんだったのか/菅江真澄と暗門の滝の謎/尾太鉱山跡で見つかった白骨/雪男を求めてヒマラヤに行ったマタギ第二章 マタギ伝説 山の神様はオコゼと男根がお好き?/老犬神社由来/サゲフリ/神様になったマタギの常徳/兼吉穴/「鬼は内ー、鬼は内ー」第三章 賢いクマ 演技して逃げ...
「秘密」 谷崎 潤一郎
- 2020/04/26
- 22:31

主人公は20代の男性。気まぐれから浅草の寺での隠遁生活を始める。寺にいながら、刺激的で奇怪な事を求め、それに耽溺するという「秘密」を楽しもうとするうちに、女装に目覚める。夜な夜な世間の目を欺いて出歩いていたが、ある劇場で、美貌の女性に会う。それはかつて自分が捨てた女であった。その翌日から2人は逢瀬を再開するが、女の家までの往復は目隠しをされて人力車に揺られて行くため、「夢の中の女」「秘密の女」に好...
安部公房とわたし
- 2019/09/23
- 05:33

「君は、僕の足もとを照らしてくれる光なんだ――」その作家は、夫人と別居して女優との生活を選んだ。没後20年、初めて明かされる文豪の「愛と死」。師であり、伴侶。23歳年上の安部公房と出会ったのは、18歳のときだった。そして1993年1月、ノーベル賞候補の文学者は、女優の自宅で倒れ、還らぬ人となった。二人の愛は、なぜ秘められなければならなかったのか? すべてを明かす手記。【目次】プロローグ第一章 安部公房との出会い第...
姥捨 太宰治
- 2019/08/22
- 04:03
青空文庫版深夜便で、ラジオ文芸館のアンコールで聞きました。その後青空文庫で読みました。☆あらすじ☆太宰治が、不倫した妻・初代と起こした心中事件をモデルに書いた私小説的な短編。あやまった人を愛撫した妻「かず枝」と、妻をそのような行為にまで追いやるほど日常の生活を荒廃させてしまった夫「嘉七」は、お互い身の結末を死ぬことによってつけようと、かつて2人でひと夏を過ごした谷川温泉を訪れる。嘉七は妻への思いから...