1957 90分 スウェーデン
サイレント期にはハリウッドまで渡った、スウェーデン映画の基礎をなした名匠シェストレムを主演に迎えて、ベルイマンが人間の一生を深く掘り下げた詩編ともいうべき秀作。医師イサクは50年に及ぶ業績を讃えられ、名誉博士号授与に赴く前夜、自分が死ぬ夢を見る。彼は息子夫婦の運転で式場のあるルンドへ向かうが、途中、青年時代を過ごした旧宅に立ち寄り、原っぱの野いちごに、積極的な弟に奪われた婚約者サラ(アンデショーン)を想い出す。その後、彼がめとった妻はくだらない男と密通し、彼を傷つけたのだ。邸を発ってしばらくして、ヒッチハイクの三人組を拾うが、そのうちの一人、女学生のサラ(アンデショーンの二役)は昔の想い人にそっくりで、彼は思うままに過ごせなかった自らの青春を悔いる。次に乗せたのは、彼らの車と事故を起こしかけた夫婦者。しかし、その口論があまりにうるさいので降ろしてしまう。が、再びまどろむイサクの夢で、その無知と人生の空疎さをあげつらうのは、夫婦者の夫だった。イサクはそこで初めて、息子エヴァルドの嫁マリアンヌの苦悩を知る。息子もまた自分と似て厭世的で人生を楽しんでいない……。式典を終えたイサクは、例の三人組の祝いの訪問を受ける。勲章よりもそうした、人とのつながりの価値を思い知ったイサクのその夜の夢は、青春の頃に戻りサラに再会する幸福なものだった。人生が走馬灯のように、とはよく言うが、このように老いて、若き日を回想できるものなのか。そのためにも生きねばなるまいと思わせる映画です。
allcinemaより
今まで見たベルイマン作品の中で一番好きでした。これの前に見たのが
処女の泉でとても不幸な話だったので、今作は誰も死なず流血も無く平和で良かった。が、描かれていることは身につまされる内容だった。イサクはまるで自分を見る様だった(まだイサクの年齢までは大分あるけれどもそれでも)。厭世的で孤独。ペットと暮らしているところも(大型犬は羨ましいが)。子供たちとも距離を置いて暮らしているところも。車の中で義理の娘がイサクに、あなたは自分勝手な人だと言うシーンは自分に言われている様な気がした(自分ではそうは思わないけれどそう思われているのかもしれない)

。夢の中で昔のファンセに鏡を見せられ、あなたはもう若くないのよと言われるシーンも、「分かってるよ。」という気持ちに(苦笑)。昔を懐かしむ気持ち、過去を後悔する気持ち、辛かった記憶が夢に凝縮されているのもよく分かる(自分もそうだから)。イサクの様に世に貢献して表彰される様な立派な人でも、これだけ後悔があるのだから、凡人にはもっとあって当然だと思うとちょっとホッとしたりして。
でもイサクの歳にして道中での様々な出来事がきっかけとは言えど、今までの自分を顧みて、反省し、改めようと思えるのはとても殊勝だと思う。自分もそうでありたいですね。
若者3人は過去のフィアンセと自分と兄弟。不和な夫婦は過去の自分の結婚生活。95歳のお母さんは未来の自分。そしてリアルで強烈な夢(特に最初の夢がシュールで秀逸)。お手伝いさんとの関係。それぞれが象徴的で分かり易い。本当に巧いなぁと思った。個人的には95歳のお母さんが強烈でしたね。
息子のお嫁さんが超美人。若者3人は若いっていいなあと和んだ。
ヴィクトル・シェストレム(本作が遺作の様です)の演技が繊細でとても素晴らしかった。
ヒューマンドラマが好きな方は是非。
TV(CS)にて
★★★★★★★★★