マンチェスター・バイ・ザ・シー
- 2018/03/31
- 17:31
2016 137分 アメリカ
「ジェシー・ジェームズの暗殺」「ゴーン・ベイビー・ゴーン」のケイシー・アフレックが心に深い傷を抱えた主人公を好演し、アカデミー主演男優賞をはじめ主要映画賞を総なめするなど各方面から絶賛された感動のヒューマン・ドラマ。ある悲劇をきっかけに故郷のマンチェスター・バイ・ザ・シーに背を向けて生きてきた孤独な男が、兄の突然の死で帰郷を余儀なくされ、過去の悲劇と向き合わざるを得なくなる悲痛な姿を、ほのかなユーモアを織り交ぜつつ切なくも優しいタッチで綴る。共演はミシェル・ウィリアムズ、カイル・チャンドラー、ルーカス・ヘッジズ。監督は「ユー・キャン・カウント・オン・ミー」「マーガレット」のケネス・ロナーガン。
アメリカのボストン郊外でアパートの便利屋をして孤独に生きる男リー。兄ジリーョーの突然の死を受けてボストンのさらに北の港町マンチェスター・バイ・ザ・シーへと帰郷する。そしてジョーの遺言を預かった弁護士から、彼の遺児でリーにとっては甥にあたる16歳の少年パトリックの後見人に指名されていることを告げられる。戸惑いを隠せないリー。仕方なくパトリックにボストンで一緒に暮らそうと提案するが、友だちも恋人もいるからここを離れることはできないと激しく拒絶され途方に暮れてしまう。なぜならばリーには、この町で暮らすにはあまりにも辛すぎる過去があったのだが…。
allcinemaより
小説の様な、ヨーロッパの映画の様な(レビューを読んだらこれをイギリスが舞台と思っている人が複数いたのに驚いたが)、そんな印象の映画でした。監督のケネス・ロナーガンがアイルランド系なのでそのせいかなと。
何ともやるせない話でした。寂しい港町の風景、雪掻きが永遠に続くボストンの雪、切ない旋律のBGM、生ける屍のリー。人生というのはこんなにも虚しいものかと。でもこういう話好きなんですよね。値が暗いのかな?😅
しかしリーの場合は自業自得ですね。確かに不幸な運命だけど真面目に一生懸命生きてる人なら同情するけど、悲劇も身から出た錆だし家族があるのに夜中に男友達を沢山呼んで騒いで奥さんの怒りを買ったり。一番呆れたのはバーで呑んだくれて、別に一人で酔っぱらうのはいいけど何故誰彼かまわず暴力振るうのかな?救いようが無い。
奥さんと再会するシーンは泣けた。そのシーンで彼は彼女の言葉に「救われたよ。」と言った。救われたんだ?良かった。と思った。ところが又すぐに呑んだくれて暴力。(@_@)やっぱり救われてないんだと思った。そうだとしても他人に八つ当たりしていては前に進めない。
ああいうことがあると生きていたくないというのは分かる。(でもあの夫婦は悲劇が無くともいずれ破綻していたと思う。彼の人間性の問題によって。)それでも現実を受け止めて十字架を背負って生きていかねばならないと思う。そうでなければ人として駄目でしょう。
つまりは詰めが甘かったってことですね。でも何故なのかなあと思ってしまう。彼はとても家族想いだった。何処へ行くにも三つの写真だけは持っていった。家族の写真でしょう。でもその大切な家族を守ることができなかった。何故((T_T))
昔麻生よう子の『逃避行』という名曲がありました。男女が知らない街に逃避行して心機一転やり直そうというシチュエーションです。駅で待ち合わせするのですが、待てど暮らせど彼が来ないのです。彼女はぼやきます。「昨日の酒に酔いつぶれているのだわ。おそらくあの人のことよ…それがなきゃいい人なのに。」そして彼女は諦めて一人切符を買うのでした。
この「それがなきゃいい人なのに。」がランディ(奥さん)の気持ちだったと思うのです。二人は相思相愛に見えました。でも一緒に生活していくには駄目だったんですね。
因みにこの作品のあとに同監督作品の『マーガレット』を見たのですが、主人公の頑なさにリーとの共通点を感じ、驚きました。それについてはまた今度書きます。
この映画を見て『サマー~あの夏の記憶~』を思い出しました。ロバート・カーライル主演のイギリス映画です。ショーンは同級生で親友のダズ(過去の事故が原因で車椅子生活)とその息子ダニエル(父子家庭)の面倒を見ながら生活していたが、ダズが余命を宣告されます。ダニエルは不良で、呑んだくれてケンカして汚物とともに外でのびているところをショーンが迎えにきて、しっかりしろと起こして家に連れて帰るシーンが切なくて忘れられません😢この三人がリーとお兄さんとパトリックと重なりました。ご興味のある方は見てみてください。素晴らしい映画です。因みに私のヒューマンドラマカテにレビューがあります。
一番印象に残ったのは悲劇の一部始終の間流れていたアルビノーニ アダージョ ト短調です。この世で最も好きな曲の一つで何度も聴いています。何度聴いてもなんてドラマチックで悲しい曲なのかと思います。この監督は悲しい曲が好きなんですね。『マーガレット』の始まりと終わりはアルハンブラ宮殿の思いでだったし。
アダージョはたまたま最近見た映画でも使われていましたが、その映画の主人公も死にたいと思っている人だったので、やはり幸福ではないシチュエーションで使われる曲なんだなと思いました。
それとお葬式のスローモーションシーン。
奥さんとの再会シーン。
ボートで始まりボートで終わるところ。
「(新居には)ソファベッドを置く。(「何で?」)おまえが泊まりにくるかもしれないから。こっちの大学に行くかもしれないし。」
も心に残った。
悲しみも辛さも消えないけれど、生ける屍だったリーを救ってくれたのはパトリックの存在だったのですよね。良かったです。
自業自得とは言えどリーは可哀想です。彼に比べれば自分の人生は平穏で幸福だと思いました。
アマゾンプライムビデオにて
★★★★★★★