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エリザのために





2016  128分 ルーマニア/フランス/ベルギー


「4ヶ月、3週と2日」「汚れなき祈り」のクリスティアン・ムンジウ監督が、娘の未来を案じるあまり、不正に手を染めてまでも卒業試験をパスさせようと奔走する父の切実な姿を、閉塞したルーマニアの社会情勢を背景にリアルかつ緊張感あふれる筆致で描き出したヒューマン・ドラマ。2016年のカンヌ国際映画祭では、みごと監督賞を受賞。
医師のロメオはある朝、妻に代わって娘のエリザを学校まで車で送ることに。しかし愛人のもとへ急ぐ彼は、エリザを学校の少し手前で降ろしてしまう。その結果、エリザは暴漢に襲われてしまう。幸い腕を負傷しただけで大事には至らなかったものの、ショックで激しく動揺するエリザ。英国留学を控える彼女には、大事な卒業試験が翌日に迫っていた。本来ならば成績優秀な彼女には何ら問題ない試験のはずだったが、とても試験をこなせる精神状態にはなかった。自分のせいで娘の英国留学が白紙になろうとしていた。それだけは回避しなければならないと、自らのコネを総動員して娘を合格させてもらえるよう水面下での交渉を重ねていくロメオだったが…。

allcinemaより












ムンジウ監督を見るのは3本めでした。他2本は「4ヶ月、3週と2日」「汚れなき祈り」です。これは2作ともとてもショッキングな内容で、特に「4ヶ月、3週と2日」はインパクトが大きく、後味最悪でした(「汚れなき祈り」もだけど)。それに比べると今作は若干マイルドかなと思いましたが、それにつけてもルーマニアというのは生きるのが大変な国なんだなとムンジウ作品を見ていると思ってしまいます。

ルーマニア作品と言えば『私の、息子』を思い出しますが、この作品では主人公一家がとてもお金持ちで良い家に住んで良い車に乗っていたので、ルーマニアにもこういうお金持ちっているんですね、当たり前かとこの国のことを何も知らない私は思ったのでしたが、今作の医師のロメオさんはエリートと思いますが、団地みたいな家に住んでいて、暮らしはとても質素に見えて、医師でも優雅な暮らしじゃないんだなと「私の、息子」の一家との落差に驚いたのでした。


ロメオお父さんは本当に一生懸命娘の為に東奔西走するのですが、全てが裏目に出るという感じで、綱渡り状態になっていく。家庭も崩壊していく。人生って本当にしんどいねと見ている方も思ってしまった。

一番印象的だったのはロメオの奥さんに言う台詞。1991年に民主化された国に帰ってきたが、結局何も変わらなかった。娘に同じ人生を歩ませたくない。という内容です。
はっきりと「外(外国)に出す為に育ててきたんだ。」と言っていました。本当に切実なんですよね。日本も結局学歴社会ですから、いい暮らしをしようと思うなら、いい大学を出て、いい企業に就職するというのが一般的なパターンと思いますが、ロメオさんの場合それが絶対「自国では有り得ない」のですよね。奥さんやお祖母ちゃんは別に自国だっていいじゃないと言うのですが、ロメオさんにはそれは絶対に有り得ないのでした。それが悲壮感漂う位必死のところが印象的でしたね。

それと街中に当たり前の様にいる野良犬。衝撃的でした。別に田舎の街には見えませんでしたが。あの野良犬を見るだけでも、日常の中に普通に野良犬がいるって怖いし、暮らし難い国に思えました。


今作を見て、ルーマニア版ROMEO IS BLEEDINGだなと。私の好きな映画(ROMEO IS BLEEDING)に引っ掻けただけですが。内容は全然違いますが、実際そのまんまのタイトルなので(主人公の名前がロメオで、ロメオがもがき苦しんでいる内容)。




ゲイリー・オールドマンの方のロメオは警官ジャックのことですが、ジャックは元からマフィアと通じていて、賄賂で私腹を肥やしている悪徳警官ですが、女マフィアモナと出逢ったことから、破滅に向かっていき、地獄を見る訳です。

今作のお父さんロメオは真面目な医師だったのですが、娘を大学に活かせる為に裏工作をしてしまう(まっとうに生きてきたのに足を踏み外す)訳です。愛人がいるところ、結局家庭が崩壊するところもジャックと同じ。
つまり二人とも人生の歯車が狂ってきて苦しんでいます。

まあこれ↑はこじつけですが😅、アスガ-・ファルハディの『別離』も思い出しました。こちらの方が共に社会派作品ですし、内容も通じるところがあり、近いものを感じました。





三人家族で夫婦と一人娘。こちらはお母さんが娘を海外の大学に行かせる為に移住を考えている。しかしお父さんは移住をする気が無い。夫婦は平行線でその溝は埋まり様が無い。そんなところにまた厄介な事件が起きてしまう。
夫婦の亀裂、娘の将来、親の介護、思いもよらぬ事件。そしてもう一つ共通点があるのですが、肝心のところ(見ている人が一番知りたかったところ)が描かれないところも同じなんです。
で?どうなったの?という結末。しかし『別離』の方はその終わり方で成功していると思いましたが、『エリザのために』の方は、え?(´・ω・`)?と思ってしまいました。と言うのはエリザのためには説明が無い部分が他にもあるのです。自宅の窓に石を投げたのは誰なのか。エリザを襲ったのは誰なのか。これじゃあハネケの『白いリボン』じゃないかっ❗しかもロメオさんの愛人の息子が、仮面を着けているシーンは、ハネケの世界観を想起しました。

この映画の中では、朝に街中で強姦未遂が起こるし、汚職が行われるのは日常茶飯事の様に描かれているし、街に野良犬がうろついているし、自宅に石は投げられるしで全てが殺伐としていますが、そんな中で唯一心が和んだのはロメオさんの愛人です。不倫をしているので悪い人なのですけれど、いつもエリザのことを心配していて、自分の息子のことも愛していて、心が優しい人でした。この人は30代でまだ綺麗なのに、こう言っては何だけど、何故こんな年上の太ったおじさんとつきあうのかなって。医師だからかなあ。不似合いです。余計なお世話だけど。


ラストシーンは、エリザもなかなか強からしいと思わせました。エリザと御両親、ロメオさんの愛人母子の未来の幸せを祈ります🙏


因みに原題は『バカロレア』ですね。本来のスペルはbaccalauréatらしく、今作のタイトルはcが一つ少ないのですが、何故かは分かりません。

>バカロレア(仏: baccalauréat)は、フランス教育省が発行する、中等教育レベル認証の国家資格である。1808年にナポレオン・ボナパルトによって導入され、2005年の時点では18歳に達したフランス国民の62%がバカロレアを取得している。なお、フランス以外の国のバカロレアに関しては、ここでは触れない。(wikiより)

>バカロレア [3] 【フランスbaccalauréat】

フランスで,中等教育の終了時の国家試験。合格者に大学入学資格が与えられる。
三省堂 大辞林

英語のタイトルは卒業となっているので、卒業という意味なのかなと思ったのですが、ロメオさんが欲しかったのは卒業資格=大学入学資格なので、そういう意味なのでしょう。邦題は『エリザのために』。うーん(-.-)。。。上の画像の色々な言語のタイトルがどういう意味なのか知りたいです。


私はこの監督のお勧め作品はと言われたら「4ヶ月、3週と2日」ですが(因みにこれだけチャウシェスク政権下が舞台になっています)、「エリザのために」も悪くないんじゃないかと思います。お子さんの将来を考えている人が見ると、色々思うところがあるのではないかと思います。


TV(BS)にて
★★★★★

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