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ある奴隷少女に起こった出来事

内容(「BOOK」データベースより)

好色な医師フリントの奴隷となった美少女、リンダ。卑劣な虐待に苦しむ彼女は決意した。自由を掴むため、他の白人男性の子を身篭ることを―。奴隷制の真実を知的な文章で綴った本書は、小説と誤認され一度は忘れ去られる。しかし126年後、実話と証明されるやいなや米国でベストセラーに。人間の残虐性に不屈の精神で抗い続け、現代を遙かに凌ぐ“格差”の闇を打ち破った究極の魂の物語。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

ジェイコブズ,ハリエット・アン 
1813‐1897。アメリカ合衆国ノースカロライナ州出身。幼くして両親と死に別れ、12歳で35歳年上の白人医師の家の奴隷となり性的虐待を受ける。苦難に満ちた自身の半生を記述した『ある奴隷少女に起こった出来事』が、刊行から約130年後のアメリカでベストセラーに 

堀越/ゆき 
東京外国語大学、ジョージ・ワシントン大学大学院卒。現在、世界最大手のコンサルティング会社に勤務(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)


Amazonの商品ページより

最近存在を知りました。オフラ・ウィンフリーが、120年以上も前にこの様に戦った女性がいたということは、とてつもないことだと絶賛している。と、この本が紹介されている記事でした。是非読みたいと思い調べてみたら、Kindleの日本版はありませんでした(電子版がある場合は電子版を購入するので)。文庫本が出ているので、それを買えばいいだけなのですが、いつも電子版を好きな大きさの文字にして読んでいるので、文庫だと字が小さいのが嫌でした。でもハードカバーだと高いし置場所も取る。そんな時に英語の無料版を発見❗とりあえず読んでみることに。
こちらです。



冒頭にイザヤ書からの引用が有り、端から聖書を出してきてその部分を確認する。以降何度も辞書を引きながら読んでいく。辞書と言っても分からない単語をポイントすれば辞書が表示されます。しかも発音まで確認できる。しかもこの様に文の上に釈まである❗世の中本当に便利になりましたね。



それでも元から英語力の無い私には読み進むのに時間がかかります。
結局3文の1まで読んだところで、日本語の方が百倍早いと文庫本を購入。




裏表紙に上の内容がそのまま書かれています。

これは何故表紙が英語版の様に著者の画像ではないのでしょうか?その方が絶対良いと思うのですが。


やっぱり日本語で読めるって最高だなあ。(やっぱり字は電子書籍より小さいけれど老眼が無いのでまだ読める)とずんずく読み進むうちに「???」と思うことがありましたが、それについては後で書きます。


「事実は小説より奇なり」そのものです。この本があまりに小説の様なので創作と思われて長い間忘れ去られていたというのも頷けます。本当によくできた小説そのものだからです。良家の子女で幼少時より高等教育を受けていたというのと逆と言っていい境遇の人が(読み書きは母の雇い主の娘に教えてもらったが)、この様に知的で洗練された文章を書けるというのは凄い才能だと思います。

この本を読んでいて(英語版の時から)私が頭に浮かんだのは映画『カラーパープル』のウーピー・ゴールドバーグ演じる少女でした。あの映画を見た時彼女の不運がとても衝撃的で忘れられませんでした。でも(あの様な境遇の少女は実際に少なくなかったのだろうと思うけれども)あの映画自体はフィクションですが、この本は事実なのです。こんなに凄い話が
しかも各人のキャラクター描写、状況描写がはっきり伝わるので、どのシーンもまるで映画を観ているようです。

長くなるから感想を箇条書きにします。
(☆プチネタバレ注意☆)

・奴隷制度は人類史上最も悲惨なものの一つ。存在は知っていたが、当事者(奴隷だった人)の手記を初めて読んで、その実態を具体的に理解できた。奴隷たちは本当に「もの」としてしか扱われない。
・何故人間はここまで残酷になれるのか。そのあまりの残酷さに人間とは何なのかと考えてしまった。
・絶望的に思える状況の中でも、生きることと自由への戦いを諦めなかったリンダと、自らの危険も省みず彼女の為に尽力してくれた人々に心から感動した。彼女の身内以外でも理解ある人々が複数いて、特に北の地で彼女を守る為に奔走してくれた女性、北の地へ運んでくれた船長(身内が奴隷の売買人であったことを恥じていた)が心に残った。いつの時代も弱き者たち寄り添う人々はいたのだと心が暖かくなった。
・(下に書きましたが)ベンジャミンと、そしてリンダの息子ベンのその後がとても気になった。


☆一部ネタバレ注意☆

前述の「???」と思った部分について。英語版にあって日本版に無い部分があることを発見。しかも結構なページ数がまるごとカットされている部分がありました。特にベンジャミンの逃走エピソードがまるごと無かったのがびっくり❗
❗ベンジャミンというのはリンダ(著者)の叔父で、リンダが「背の高いハンサムな青年」と形容していた人で、彼も奴隷だったのですが、雇い主から逃走し、一度捕まって投獄されましたが、紆余曲折を経て北への逃走に成功した人です。彼はニューヨークでリンダのもう一人の叔父フィリップと再会し(フィリップも奴隷でした)、ベンジャミンの薦めで母親(リンダのお祖母さん。彼女は長く奴隷を勤めた後に自由の身に。)の元へ帰るよう薦めました。僕はトラブルの元だから君が帰るべきと。そしてお母さん(リンダのお祖母さん)が雇い主からフィリップを買い取り、母と息子は再び一緒に暮らせるようになりました。
ベンジャミンの逃走劇はとてもドラマチックだし(途中で彼を助けてくれる人との出会いがあったのです)、この様ないきさつがあってフィリップはお母さん(リンダのお祖母さん)と再会できたということがまるまるカットされているのは実に勿体ないと思いました。私は英語版は3分の1しか読んでいませんが全部読めばおそらく他にも複数カットされている部分があるのでしょう。翻訳者の後書きには、翻訳に際し読みやすさを重視しする為、著者自身の人生から逸脱する登場人物に関する記載(ベンジャミンの件はこれですね)、リンダの当時の奴隷性に関する一部の政治的見解や描写、当時の女性著者特有の感傷的に響く重複は削除したとありましたが、日本語で読めるのは本当に有り難いと思いますが、この判断にはがっかりです。何故そのまま全てを訳してくれなかったのかなと。ベンジャミン以外の部分でも何故この部分をカットするのかなと違和感を感じる部分がありました。この本はノンフィクションで、実際に奴隷だった人が残した手記というのは本当に貴重な資料なのでその全てを私は読みたかったです。彼女の遺した一言一句を。そう思う人は少なくないのではないでしょうか。この判断だけはとてもがっかりだったので是非完全版を出してほしいです。英語を読める方は原作の方をお勧めします。

その点を差し引いても日本版を出してくれたことは有り難く思いました。是非全ての人たちに読んでほしいと思いました。人類にはこういう悲惨な負の歴史があったということを心に刻む為に。そして今も地球上に囚われの身で生きている人々のことを思いました。北朝鮮の拉致被害者の人々もそうです。人間(自分達の利益しか考えない
)て本当に最低だと思いました。


この本を読んで奴隷に関して少しネットで調べ、アフリカ大陸からアメリカ大陸に連れてこられた奴隷たちの話なども読みましたが、その中で奴隷たちを助けることに尽力した「地下鉄道」という組織を知りました。その中に自由黒人で「地下鉄道の父」と呼ばれたウィリアム・スティルという人の存在を知りました。その人が自身の体験を元に1872年に出版した『地下鉄道』という本の存在を知りました。同タイトルでコルソン・ホワイトヘッドのベストセラー(現代小説)の方ではなくて、私はウィリアム・スティルの方が是非読みたいなあと思いました。実際に当事者が書いたものだからです。でも日本版は見つかりませんでした。何処かで読めないものでしょうか。何かご存じの方は教えてください。

ある奴隷少女に起こった出来事は是非映画化してほしいと思いました。

満足度
★★★★★★★☆


お薦め度
★★★★★★★★★★

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