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運び屋





2018  116分  アメリカ


巨匠クリント・イーストウッドが「グラン・トリノ」以来となる監督・主演で贈る実録犯罪ドラマ。大量の麻薬の運び屋として逮捕されたのは、著名な園芸家でもあった孤独な老人だったという前代未聞の実話をモチーフに、仕事一筋だった主人公が、思いがけずメキシコの麻薬組織に雇われ、運び屋という危険な犯罪に手を染めたことで、いつしか自らの人生と改めて向き合わざるを得なくなるさまを、長年顧みてこなかった家族との関係とともに、ユーモラスなタッチを織り交ぜ描き出す。共演はブラッドリー・クーパー、アンディ・ガルシア、ダイアン・ウィースト。
退役軍人のアール・ストーンはデイリリーというユリの栽培に情熱を燃やし、園芸の世界では一目置かれる存在だったが、その代償として家族をないがしろにしてしまい、90歳になろうとする今は家族との間に埋めがたい溝を抱え、孤独な日々を送っていた。やがて農園の経営も行き詰まり途方暮れるアール。そんな時、“車の運転をするだけで大金がもらえる”という仕事を紹介される。最初は荷物の中身を知らずに運んでいたアールだったが、ほどなくそれが大量のドラッグであることに気づく。それでも90歳の老人が疑われることはほとんどなく、順調に仕事をこなしていくアールだったが…。

allcinemaより












やっぱりイーストウッドはいいね❗よくある、あそこのあれはどうなってるの?という不可解な部分が無いもの。流石イーストウッドだ☺️✨本人が出演しているのも本当に久しぶりに見て、それ自体がとても嬉しい。いつものクリントだった。元気で良かった。


犯罪ものですが、淡々と進みスリリングな展開は無いので、そういうものを期待する方には向きません。
どちらかと言うとロードムービーの趣です。アールはドラッグを運んでいるのだけれど陽気に歌を歌いながらドライブ🎶🚗💨🎶それにつられて並走するマフィアの強面男たちも歌いだす(笑)。美味しいポークサンドを食べるために勝手に寄り道。綺麗なお姉さんたちともお楽しみ💓(笑)タイヤをパンクしている人を見ると助けに行く。相手が誰でも臆せず話し冗談を言う。人として魅力的で愛すべき男。でも家族にとっては最低の人。

これはアールという一人の人間と彼の人生を見る映画ですね。特に中年以降の方はこの映画を見て自分とアール(或いは彼の元妻、娘)を重ねて何らかの感慨を持つ方が多いのではないでしょうか。自分もそうでした。90歳では無いし、まだ老人でも無いけれど、人生は残りの方が少ないから。色々な感慨がありましたね。

アールは最晩年になって自分の人生の過ちに気づく。もっと家族と過ごすべきだった。何と愚かな夫、父親だったのだろう。
悟ったアールはやっと家族と大切な時を過ごし、頑なだった家族の心も解れる。しかし時は戻らず90歳のアールには時間はあまり残されていない。

「何でも買えたのに時間だけ買えなかったんだ」

そりゃそうだよ。人生は有限なんだもの。でも人って今日と同じ様に明日もあると思ってしまうのですよね。

☆プチネタバレ☆


良い映画と思いましたが一つ引っかかったところがあります。アールと家族の関係の修復です。ここはリアリティを感じられなかった。普通は不可能だと思います。アールは確かに危険を犯して必死で家族と過ごした。でもそれはたった数日間のことだった。それで家族の心の何十年間の空白が埋まる筈はない。妻はともかく娘はあまりに寛大すぎる。そういう人もいるかもしれないが、私には違和感があった。しかもアールは長年家族をほったらかした挙げ句に犯罪者になったのだ。家族にとっては踏んだり蹴ったりだと思う。その不名誉はずっと消えないんだもの。
最近ともしびを見たのですが、この映画の中で忘れられないシーンが、アンナが孫の誕生日に手作りのケーキを持って息子宅へ行き、息子に門前払いされるシーンです。息子に「そっとしておいてくれ。あんたは歓迎されてない」と言われアンナは公共トイレのなかで号泣する。とても悲しいシーンです。息子との確執の理由ははっきり分からないのですが、父親が収監されていることに関係があるのかもしれません。ストーリー中ではこの確執は修復されません。
私はこちらの方がアールと家族の修復よりもリアリティーを感じました。世の中にこういうケースは沢山あると思います。特に犯罪者とその家族には多いのではないでしょうか。家庭を省みなかった人、毒親世帯も修復は不可能と思います。アールの娘は父を「遅咲き」と評しましたが遅すぎると思いました。それでも自分の非を認めたことは良かったと思います。

アールは国の為に戦争に行ったのにマフィアの為に違法に働くなんて変です。初めは何を運んでいるか知らなかったが、それがドラッグと知ってからも仕事を続けた。でも実際一文無しになったらホームレスになるか生活保護を受けるか運び屋になるしかないのかもしれません。90歳では仕事が無いですからね。肉体労働もできないし。そして一度大金を手にしてまうとやめられないのでしょうね。アールの友人にアールのお金をあてにする人が出てきましたが、お金のあるところには絶対にたかる人が出てくるし、アールは基本お人好しだしで際限が無くなるのでしょうね。

冒頭のカバーにもinspired by a true storyとありますが、本編にも「ニューヨークタイムズの別冊、『90歳の運び屋』に着想を得た。」とあったので、実際に90歳で運び屋をやっていた人がいるのですね。まさか90歳でスリルを味わう為に運び屋はやらないでしょうから、やはり生活の為でしょうね。安心して長生きできるのはお金持ちだけという厳しい現実を突きつけられている様です。


個人的には監督作品としては前作(パリ行き)の方が好きでしたが、本人の元気な姿を見られたのが収穫でした。その他の配役はBクーパー、Lフィッシュバーンは個人的にはもう見飽きたし、マフィアのボス=Aガルシアも定番でつまらなく、その辺りは私には重要ではありませんでしたが(でもアールとコリンのやりとりは良かった)、アールの家族の面々は良かった。それとメキシコ系マフィアの面々は怖くて存在感があった。

因みに今作は『グラン・トリノ』の作風に近いです。ああいう傑作と比べると物足りないけど、良い映画と思います。


★★★★★★



コメント

No title

かずさん


ですね☺️👍

No title

クリント渋かったな~
役者クリントもまだまだ見たいです。

No title

> 飛行機雲さん

傑作とは思いませんでしたが、良い映画だと思います☺️

No title

おそらく私好みの映画のような気がします。

No title

> まうさん

若干物足りない感もありましたが、こういう本当に普通の映画って(トリッキーなところや訳が分からないところがない)作り手が減っていく気がするので、絶滅危惧種の様な気がしました。

No title

良かったですよね。
家族とのストーリーに関しては、都合が良いなぁとおもいましたが、主人公がなぜどんどん犯罪に手を染めていくのか、丁寧にわかりやすく見られました。

No title

> The caged pantherさん

おはようございます。

ダイアン・ウィースト良かったです。流石ベテランですね。

アールを見ていると(イーストウッド自身もそうですが)人生ってあっという間なんだなと改めて思いました。用心棒とか確かに昔で私はよく知らない。ダーティー・ハリーも気がつくとかなり前。監督作品も古いものも多くて、今年の5月で89歳。長い時間だけれどあっという間に見えます。それにしてもクリントは若いです。

No title

おはようございます。

イーストウッドにしても、ウッディ・アレンにしても、高齢でも実に精力的ですよね。ぜひ見習いたいものです。

アンディ・ガルシアとダイアン・ウィーストの名前を久々に見たような気がします。ガルシア=マフィアのボスはたしかにありきたりな配役ですね。

かみえるさんのレビューを読んだ限りでは、私もこれを観たら、きっと自分と主人公を重ねてしまうように思います。

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