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八月の鯨





1987  91分 アメリカ


リリアン・ギッシュとベティ・デイヴィスの二人の大物女優主演による友情ドラマ。リビーとセーラの姉妹は、長い人生のほとんどを一緒に過ごしてきた。そんな姉妹は毎年夏の間、アメリカ・メイン州の小さな島にあるセーラの別荘に滞在していた。そこの入江には、8月になると鯨がやって来る。少女の頃、よくその鯨を見に駆けていったものだが、二人ともそれは遠い昔のこととなってしまった……。ギッシュ90歳、デイヴィス79歳、プライス76歳、サザーン78歳、ケリー・Jr66歳という、いずれもハリウッド映画のそれぞれの分野で一流の人生の年輪を重ねてきた名優達で繰り広げられるこの物語は、何と言っても5人とも本作での役が適役であり、彼らの老練の演技が、ささやかな日常生活を描いたこの作品に味わい深い雰囲気とドラマの奥行きを作りだしている。

allcinemaより




















前から見たかった作品で、やっと見ました。とても素晴らしかったです。一言で感想を言うなら「なんと優雅な」につきます。冒頭のセピア色の画面、三人が白いドレスに身を包み(これが普段の服装なのですからなんと優雅な)姿を現した鯨に心ときめかせて双眼鏡片手に走り出していく。これで一気に魅せられました。

そこから場面は一転。海辺の別荘に老姉妹が二人暮らし。姉は盲目で妹がお世話している。電話もインターネットも無く、ゆったりとした時が流れる。妹は姉の世話をする以外は、うつくしい海を長め、お花の手入れをしたり、バザーに出すぬいぐるみを作ったり、絵を描いたりして過ごしている。姉は時々妹に岬まで連れていってもらう。家には時々友人や近所の人、修理工が訪ねてくるが、基本二人でゆっくりと過ごしている。そんな姉妹の日常を描いたお話。

特に何かドラマが起こる訳でもなく二人の日常を淡々と追っているだけなのですが、ロケーションが素晴らしいし、何と言っても俳優たちの存在感が凄い。表情や所作が素晴らしく、それを見ているだけで圧倒された。この人たちは俳優じゃなくて本当にここの住人なのではと思わせるフィット感も素晴らしいし。

リリアン・ギッシュはこんなに美しく可憐な90歳がいるのかと驚愕した。本当に美人。デイヴィスは今作出演の2年後に病死している様なので、顔は若干病んで見えたが見事な銀髪だった。流石女優。

とにかく二人の優雅な暮らしが羨ましかった。特に没落貴族のロシア人のお爺さんを招いてのディナーが素敵だった。お爺さんは正装をして、庭に咲いている花を積んで姉妹宅を訪れる。そう、レディーの元を訪れるのに花は欠かせない。姉妹もきちんと正装をして出迎える。この時のセーラの身支度の様子がとても素敵。手際よく髪をアップし、顔にうっすら粉を乗せる。淡いパープル花柄のワンピース。それに似合う品の良いジュエリー。そしてそのいでたちをきちんと誉めるお爺さん(ここが大事)。




何て素敵なのでしょう。女は幾つになっても美しくできるのですね。でも私たちの日常から見ると優雅すぎるけれど、昔はこれが日常だったのでしょうね。



しかし一見優雅な老姉妹ですが、現実は老々介護ですし、リビーも言っていましたが二人の年齢を考えると「(この暮らしは)あとわずかしか残されていない。」のですよね。姉妹と幼なじみのティシャも二人の将来を案じて家を売りに出す様に勧める。

☆プチネタバレ☆

印象に残ったシーンです。

姉妹宅にディナーに来た没落貴族のお爺さんは、昔話のあとこれが最後の一つですと貴族だった母が遺してくれた指輪を見せる。これがあれば一生困りませんと。お爺さんは最近居候していた家の主の女性を亡くしたばかり。彼は没落後、知人宅に居候を繰り返しながら浮き草の様に生きてきたのだった。お爺さんの魂胆を察したリビーはここに住むのは無理よとバッサリ。お爺さんとセーラは驚く。セーラはお爺さんに謝ったがお爺さんはあなたのお姉さんは正しいと言う。又来てくださいと誘うセーラに、もうお会いしない方がいいでしょう、良い思い出になりましたとお爺さんは去っていく。。。袖振り合うも多生の縁。さよならだけが人生だ。

命もお金も有限で老いていくことへの不安は避けることはできない。彼らはすでに老人だがこれからも人生は続く。老後破綻や老々介護、孤独死が社会問題になっている昨今、この30年前の映画にも現実的なことを結びつけて考えてしまいましたが、当時も今もやっぱり先立つものはお金なんだなと思わせます🙇

セーラは戦争未亡人だし、リビーは娘に同居を拒否されおり親子関係はうまくいっていない。幸せなだけの人生ではなかった。それでもあんな優雅な時間を人生の中で持てるということ自体が只々羨ましい。

☆話ついでに☆

海辺の家というと色々な映画を思い浮かべると思いますが、私が思い浮かべるのはまず灯台関係です。




喜びも~と灯台守の恋は永遠に大好きです。

風景として一番印象に残っているのはトリュフォーの『恋のエチュード』。




画像が無かったのですが、主人公の青年と愛憎を繰り広げる姉妹が暮らす家が海を見下ろす高台にあって、あれを見た時はこういう素晴らしい環境に暮らしている人もこの世にはいるんだなあと思ったのでした。この映画は話の内容も凄かったですが。

個人的には海の側は津波が恐いから住みたくないけど、湖の側の山並みが見えるところに住みたいです。


ということで、とても良い映画なので未見の方にはお勧め致します。それにつけても俳優たちの長いキャリアはお見事の一言です。

「人生は長すぎるわ。」
「長すぎることはない。」
「死ぬタイミングを逃しても?」
「死ぬまで人生です。」

他心に残る台詞が沢山ありました。

★★★★★★★★★★

コメント

No title

> hisa24さん

こんばんは。
ナイスとコメントありがとうございます☺️✨

とても感動しました。この年齢で主演で映画を一本撮るのって大変だろうと思いましたが、流石にプロでしたね。素晴らしかったです。
私も鏡のシーン好きです。とても素敵ですね😌💓

No title

こんばんは。
ずいぶん前に観ましたがとても良かったですね。二人の女優の集大成
のような気がしました。リリアン・ギッシュがデイトの前に鏡を見る
シーンが印象に残っています。

No title

> taihachiさん

『光をくれた人』記事中に挙げました☺️
原題the light between oceansです。
悲しいけれど美しいいい映画でしたね。
八月の鯨の中でお爺さんが月明かりに輝く海を銀貨に例えて、これは永遠に消えない宝と言います。正にはlight between oceanです。海は希望を与えてくれるのですね。

No title

海辺と灯台・・・私は昨年観た「光をくれた人」です{

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