2018 117分 アメリカ
アマゾンプライムビデオより
☆ストーリー☆
ドキュメンタリー映画作家のジェニファーは日々忙しく過ごしていた。ある日母親から電話がきた。ジェニファーが13歳の頃に書き残したものに重大なことが書かれているので事を明らかにした方がいいと言う。ジェニファーは当時の記憶を辿っていく。
13歳のジェニファーはミセスGに乗馬を習っていた。ミセスGの知り合いビルがジェニファーのランニングコーチだった。ビルはミセスGの愛人だった。ジェニファーにとって二人は完璧な存在で憧れだった。ある日ビルの自宅にジェニファーは泊まることに。ビルはジェニファーにミセスGと君と僕だけで理想の楽園を作ろうと誘う。
冒頭に「私が知る限りこの物語は事実である」と表示されます。
何とも壮絶な話で言葉も無いという感じでした。この物語(経験)を作品にした監督に敬意を表します。ネットで昨今の#MeTooムーブメントが無ければ、この作品も日の目を見なかったかもしれないという記事を見ましたが、本当に世に出て良かったと思いました。
まだ比較的最近『白日の誘拐劇』という映画を見ました。
少女が小児愛者に二回誘拐された事件のドキュメンタリーです。こちらも驚きの内容でした。
この犯人とビルに共通点がありました。女の子の両親に親しく接し、安心させ油断させるのです。ビルはジェニファーの両親にプレゼントまであげていました。親たちは灯台もと暗しで自分の身近な人物がまさか変態とは思いもしないのです。(ジェニファー・フォックスのインタビューを動画で見ましたが、当時彼女の父親はその様なことには無関心で「世界は平和だと思っていた」と言っていた)
でもジェニファーの母親は何か怪しいと思っていましたが、当時は事が明らかになりませんでした。お母さんにとってはそのことがずっと心に引っかかっていたのかもしれません。
子供時代と思春期はとても難しく危険なのだと改めて思いました。ジェニファーの場合は家庭が嫌いだったのです。とても居心地が悪かった。そんな時にミセスGとビルに出逢いその世界に没頭してしまった。ビルがジェニファーをレイプしたこともジェニファーは愛だと思っていた。『白日の誘拐劇』の犯人は女の子にUFOの話をし、僕たちの任務は重大だからとか何とか言って女の子を洗脳していました。そして誘拐し車に監禁していた。悲しいことにこの被害者も犯人を愛していたのです。
ジェニファー・フォックスがこういうケースは一つ一つ全部違うし難しいと言っていました。本当にそうなのだろうと思います。でもこういうことは誰の身にも起こりうることだと思います。周りの大人たちがいつも細心の注意をはらってあげてください。男の子でも同じです。
私は電車で痴漢、街で露出狂に遭遇したことがあります。深刻なレベルではないですが、何年経ってもトラウマになっています。レイプを経験した人のトラウマは想像できないくらい深いものだと思います。それを克服し、前を向いて生きている人たちに敬意を表します。こうして書いている間も獣たちに対しての怒りが沸き上がります。
ジェニファーの子供時代を演じた女の子とローラ・ダーンが素晴らしかったです。ローラ・ダーンはオスカーに値する名演と思います。因みにこの役にローラ・ダーンを推したのはブライアン・デ・パルマだそうです。
今作を見終わってとても不愉快だったのはビルは当然だけど「ミセスG」。この人がジェニファーを陥れた張本人です。まだ子供のジェニファーを全く悪びれずに弄んだ。本人が悪いことと思っていないことが救いようが無い。この人に道徳観というものは皆無だった。同性として少女への態度が理解に苦しむ(それ以前の問題だが)。
大人のジェニファーが当時のことを訊きに老婆になったミセスGを尋ねたがとぼけて何も言わない。過去を後悔しているとは言ったが謝罪は無い。どころか「乗り越えるのね。」と来たもんだ。あれには呆れた。身勝手な人間は死ぬまで身勝手なのだと思った。ビルも同じ。詳しくは作品をご覧ください。
この映画のインタビュー動画で「70年代だから」という言葉が何回か出てきた(因みに白日の誘拐劇も70年代の事件)。70年代はクレイジーな時代だったということだと思うが、どんな時代であってもこの映画で描かれている様な悪夢は絶対にあってはなりません。
ジェニファー・フォックスは自身の両親を典型的な50年代のタイプの人たちと言っていた。自分も自分の両親を、古い人たちで地方出身の保守的な人たちだから柔軟性がなかった部分があるのは仕方ないとよく思う(きちんと育ててもらったけど)。でも今の時代の方が虐待のニュースが絶えなかったりして、親子関係はもっと悲惨になってきている感じがする。色々と考えさせられる映画でした。
映画としてもとてもよくできていると思うので、多くの人に見て欲しいと思います。
レイプシーンではボディダブルで大人の女優で行われ、少女の撮影には両親と心理学者立ち合いの元に行われたということです。
★★★★★★★★