説明
内容紹介
第15回新潮ドキュメント賞受賞!
小津との本当の関係、たったひとつの恋、経歴の空白、そして引退の真相……
伝説を生きた女優の真実を鮮やかに甦らせた、決定版の本格評伝。
その存在感と去り際、そして長き沈黙ゆえに、彼女の生涯は数多の神話に覆われてきた。
真偽の定まらぬままに――
3年以上の歳月をかけ、埋もれた肉声を丹念に掘り起こし、ドイツや九州に痕跡を辿って浮かび上がったのは、
若くして背負った「国民的女優」の名と激しく葛藤する姿だった。
未公開のものも含め、貴重な写真を多数収録。
≪目次≫
まえがき 原節子と会田昌江
第1章 寡黙な少女
第2章 義兄・熊谷久虎
第3章 運命との出会い
第4章 生意気な大根女優
第5章 秘められた恋
第6章 空白の一年
第7章 屈辱
第8章 孤独なライオン
第9章 求めるもの、求められるもの
第10章 「もっといやな運命よ、きなさい」
第11章 生きた証を
第12章 それぞれの終焉
第13章 つくられる神話
あとがき 会田昌江と原節子
主要参考文献
内容(「BOOK」データベースより)
小津との本当の関係、たったひとつの恋、空白の一年、そして引退の真相―。伝説を生きた女優の真実を鮮やかに甦らせた、決定版本格評伝。
著者について
1969(昭和44)年、神奈川県茅ヶ崎市生れ。白百合女子大学卒、同大学院修士課程修了。約5年の歳月を費やして『おそめ』(新潮文庫)を執筆。綿密な取材に基づき、「伝説の銀座マダム」の生涯を浮き彫りにした同書は高い評価を受け、新潮ドキュメント賞、講談社ノンフィクション賞、大宅壮一ノンフィクション賞の最終候補作となった。著書に『日本の血脈』(文春文庫)、『満映とわたし』(岸富美子との共著・文藝春秋)などがある。
著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)
石井/妙子
1969(昭和44)年、神奈川県生れ。白百合女子大学卒、同大学院修士課程修了。約5年の歳月を費やして『おそめ』(新潮文庫)を執筆。綿密な取材に基づき、一世を風靡した銀座マダムの生涯を浮き彫りにした同書は高い評価を受け、新潮ドキュメント賞、講談社ノンフィクション賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)
Amazonより
おそめがあまりにも面白かったので、おなじ著者ということで買いました。でも石井さんの文章目当てに買い、原節子は存在は知っていたけど(因みに平成になってから『東京物語』を見るまでは名前を知っているというだけでした)特にファンではないからか、猛烈に読みたいという気が無く(おそめは面白すぎて貪るように読んだのですが)、冒頭の写真集を眺めて綺麗な人だなあと思い、続けて本文の最初の何行かを読んだあと3年程積ん読になっていました🙇でも折角買ったのだからちゃんと読もうと思い、最近真剣に読み始めたらとても面白く、三日で読了。流石石井さんです✨因みに2016年にハードカバーを買ったのですが、現在は文庫化及び電子書籍化されていました。電子書籍化されているというのは素晴らしいですね。でも石井さんの著書で電子書籍化されているのはこれだけの様なので、やっぱり題材が特別だからだなあと。改めて伝説の国民的大女優原節子さんの影響力を実感。
本書は原節子の伝記ですが、原さんの歴史と共に日本映画史、原さんが生きた時代の日本史、世界史の本にもなっていて凄く勉強になりました。
それととてもインターナショナルな内容なのが印象的でした。『おそめ』も川端康成や白洲次郎他文化人の話が色々と出てきましたが、『原節子の真実』に登場するのは、例えばマレーネ・ディートリッヒ、ジャン・ルノワール、ジュリアン・デュヴィヴィエ等々超インターナショナルでした。原さん曰くディートリッヒは開放的で親しみやすい感じの人だったとか。パラマウント映画の撮影所を見学した時、大好きなゲイリー・クーパーのサインをもらうか迷ったが、結局気が引けて化粧部屋をノックできなかったというエピソードに原さんのシャイで奥ゆかしい一面を感じました。他にも一映画ファンとして興味深い逸話がてんこ盛りでした。でも一番興味深かったのはやはり原さんと映画監督たちとのエピソードです。小津監督との仕事(出演作品)は好きではなかったというのは衝撃でした。『羅生門』の京マチ子の役は、当初原さんだったというのも全然知らなかったので凄くびっくりでした😲
この伝記を読んでの感想を一言で言うなら大変な人生だったなあということです。
☆☆ネタバレ注意☆☆
女優に興味は無かったが家族を養う為に女学校を中退してその道に入った。今と違って女優の地位が低かったので苦労した(ロケ先でくたくたに疲れてお風呂に入ったら「チンピラ女優の分際で一番風呂に入ったのかっ!」と監督に怒鳴られたというエピソードが全てを語っている)。仕事はいつも真剣にやったが何年も好きではなかった。でも家族を養う為にやめられなかった。戦中戦後しばらくは食料調達に奔走。栄養失調にもなった。強いライトで白内障になり、片目の視力をほぼ失い、長年のハードワークで体調不良になり腸の手術もした。義兄に阻まれ愛する人と結ばれなかった。カメラマンの実兄を撮影中の事故で失った。何十年も念願だった役はついに演れなかった。引退しても世間が放っておいてくれないので、気楽に散歩もできず完全に隠遁生活になっていった。
財を成し、伝説にもなったけれど、失ったものも大きすぎた気もする。特に生涯で只一度の恋が成就しなかったことと、お兄さんのことは。
一度有名になると二度と無名になれないのは宿命だけれど、静かに暮らしたい原さんの気性を思うと気の毒だった。私ならーその美貌からスカウトされ女優になったが、キャリア6年で実業家との結婚を機に引退し、日本とハワイを往復して暮らしたという藤山陽子(原さんが引退を決めた後、それまで11年間東宝のカレンダーで1月を飾ってきた原さんの代わりに、1月を飾ったのが司葉子と藤山陽子だったとあります)ーの人生の方が個人的には正直ずっと羨ましい。原さんは背負ったものが大きすぎたから。
それもこれも生まれた星(宿命)が違うのですよね。原さんは大女優になる運命だった。
他に最も印象に残ったことは、原さんの凛とした人となり。自分の生き方を貫いた人。それにつきます。
それにしても原さんの様に生涯独身で、引退後の人生の方が長かった人もいれば、山田五十鈴の様に4回結婚して仕事も生涯現役を貫く人もいれば、先の藤山陽子の様にさっさと結婚、引退する人も。人生色々です。しかし今後原さんの様な伝説になる人は2度と現れないでしょう。
因みに原さん以外で一番印象に残ったのは義兄の熊谷久虎。本気で九州を日本から独立させようと思っていたということだけを取ってもかなりぶっ飛んだ人でしたね。映画監督としても殆ど?成功していないが、原さんは深く信頼していた。とにかく強烈すぎる個性でした。でもこの人がいたから女優原節子が誕生した。
個人的には『おそめ』の方がツボでした。波乱万丈感が高く、正に映画の様でした。例えば秀さん(バーおそめ店主)のお母さんのお話。お母さんは嫁ぎ先の家で虐げられて子供たちを連れて家を出た。その後その家は没落した。ある日お母さんが街を歩いていたら、みすぼらしい男に煙草を一本くれないかと声をかけられた。それが元夫でぞっとした。夫は家が没落後満州に渡ったが暮らしていけず、愛人と共に愛人の故郷広島に渡ったが被爆し、愛人を失った。その後一文無しで地元に帰ってきた。結局秀さんが面倒を見てあげることにした😲この様な展開が殆ど小説そのもの(でも事実)でハマりました。原さんのお話も時代的にもドラマチックな展開はありましたが、基本とても現実的で、正にノンフィクションという感じでした。両方ともノンフィクションですが印象が違いました。両方よくできているので共にお勧め致しますが。
個人的には原さんが現役だった時代の映画会の様子を、窺い知ることができたことが一番の収穫でした。やっぱりノンフィクションより面白いものは無いと今作を読んでも思いました。
満足度★★★★★
ぬこが枝折(赤い紐)がもの凄く気になるらしくて、いつ・どこで・どんな姿勢で・読んでいても、この紐をめがけて追いかけてくるので(隠しても探している)、猫が寝ている時以外は読むのが大変でした😅