追想
- 2019/05/20
- 09:29

2018 110分 イギリス
「つぐない」の原作者イアン・マキューアンの傑作恋愛小説『初夜』を、主演に「つぐない」のシアーシャ・ローナンを迎え、マキューアン自ら脚本を手がけて映画化した切なくも心に沁みる感動作。社会的にも文化的にもいまだ保守的な1962年の英国を舞台に、結婚式を無事に終え、新婚旅行先の海辺のホテルで初夜を迎えようとしていた若いカップルが、互いに愛し合いながらも幼さゆえの行き違いへと発展していくまでの揺れる心の軌跡を、回想シーンを織り交ぜつつ緊迫感溢れる筆致で繊細に綴る。共演は「ベロニカとの記憶」のビリー・ハウル。監督は舞台を中心に活躍し、TV「ホロウ・クラウン/嘆きの王冠」でも高い評価を受けたドミニク・クック。本作が長編映画監督デビューとなる。
1962年、夏。バイオリニストとしての野心を秘めたフローレンスと歴史学者を目指すエドワード。偶然の出会いをきっかけに一瞬で恋に落ちた2人は、対照的な家庭環境などさまざまな困難を乗り越え、ついに結婚式の日を迎えた。式を終えた2人が新婚旅行へと向かった先は風光明媚なドーセット州のチェジル・ビーチ。幸せいっぱいでホテルにチェックインした2人の心に、数時間後に迫る初夜を上手く終えられるか、という不安が次第に重くのしかかっていくのだったが…。
allcinemaより
封切り時から見たかったけど見れなかったので、とても楽しみに見ました。とても良かったです。泣きました😭
☆☆ネタバレ注意☆☆
結婚当日初夜が上手くいかずぎくしゃくし、結局お互いを庇いきれずに6時間で破局してしまうのですが、それまでが二人とも本当に愛し合っていたので非常に切ないものがありました。フローレンスの結婚後も(私はできないから)あなたは他の人とセックスすればいいという提案もびっくりだけど、エドワードの「お前は不感症で俺はカモにされたんだ」には絶句。有り得ません。あれを言葉に出してしまってはおしまいですね。フローレンスが「気持ち悪かった」と言ったことに対しても、思慮深い人間なら、彼女がそう思ってしまう原因は何なんだろうと考える筈です。それを激怒して相手を責めることしかできないなんて愚かです。
若気の至りと言えばそうですが、それだけのことではなくて、フローレンスにはトラウマがありそうです。はっきりとは描かれませんでしたがおそらくは子どもの時に父親に性的虐待をされたのでしょう。なので性的行為に対して拒絶反応を示す。けれどキスをしたりいちゃいちゃするのは問題ないというところに違和感がありました。フローレンスが神父と話をしているシーンが印象に残りましたが、あの神父は何か事情を知っていたのでしょうか。トラウマの訳がきちんと説明されないところは中途半端ですっきりしませんでした。それとフローレンスが相手が変われば男性を受け入れることができ、3人も子どもを設けた過程も全く描かれないのも個人的には不満でした。
この二人のケースは極端ではありましたが、こういうことは実際にあると思います。私も今まで生きてきて、人との縁は結構簡単に切れるものだということを何度か感じています(男女を問わず)。それまで10年や20年、或いはそれ以上のつきあいがあってもです。でも結局そういう御縁なのだと思います。『ブルックリン』で(☆☆ネタバレ注意☆☆)エイリシュはアイルランドに帰った時に素敵な男性と御縁がありましたが、結局夫の元へ帰りましたね。アイルランドの彼は背が高くイケメンで家柄も良かったと記憶していますが、背が低くて労働者階級の夫よりもあっちの彼と結婚した方がずっと良さそうに思いましたが、結局全ては運命なのだと思います。
二人の破局後のエピソードは無い方が良かったという意見が多い様ですが、私はあって良かったと思います。両方泣けたし演奏会のシーンは素晴らしいクライマックスだと思いました(完全に『ラ・ラ・ランド』がフラッシュバック😭)。でも老け顔メイクが酷すぎて途端にコメディになってしまった感は否めません😣もう少し何とかならなかったのでしょうか。エドワードのも駄目だったけどチャールズ(フローレンスの夫)の老けメイクは完全にコメディで残念🙇やっぱり辻さんは天才なのだと実感。
グサッと来たのは老いたエドワードが独身だったことです。それだけフローレンスへの愛が深かった、あの時失望感が大きかったということなのでしょうか。
ストーリーとキャストも良かったですが、チェジルビーチの圧倒的な美しさ、クラシックとロックを絶妙に使い分けたサントラが最高でしたね。
『レディ・バード』が期待した割りにはピンと来なかったのですが、今作は脚本に物足りない部分はあったけれど総じて好きでした。
★★★★★★★☆