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判決、ふたつの希望

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2017     113分 フランス/レバノン

アカデミー賞でレバノン作品として初の外国語映画賞にノミネートされたヒューマン・ドラマ。宗教や政治が複雑に絡まりあったパレスチナ情勢を背景に、最初は個人と個人のささいな諍いだったはずが、いつしか国中を巻き込んだ泥沼の法廷闘争へと発展していくさまを描き出す。主演はアデル・カラムとカメル・エル・バシャ。監督はレバノン出身のゆジアド・ドゥエイリ。
 レバノンの首都ベイルート。パレスチナ難民でイスラム教徒のヤーセルは現場監督として住宅の補修作業にあたっていた。するとアパートの住人でキリスト教徒のトニーとトラブルになってしまう。翌日、ヤーセルは上司に伴われ、トニーのもとへと謝罪に赴く。神妙なヤーセルだったが、トニーの放ったある一言に感情を抑えられず、思わず手を上げてしまう。ついに2人の対立は法廷へと持ち込まれるが、弁護士同士の激論は火に油を注ぐ結果に。そこにメディアが飛びつき、事態はトニーとヤーセルの思惑を超えてレバノン全土を巻き込んだ巨大な政治問題へと発展してしまうだったが…。


allcinemaより

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原題は『侮辱』。劇場公開時から観たかったので、さっさと見たかったのですが、ヘビーな内容なのだろうなと思うとなかなかサクッと見られませんでしたが、やっと見ました。自分も些細なことから訴訟を起こされそうになったり、起こしたいと思ったこともあったので、そういうことも思い出して心がぐちゃぐちゃしました。これを見たらそういう思いをすると分かっていたのでサクッと見られなかったのです。。。でも見て良かったです。いい映画でした。

冒頭のところで「ここで描く見解は監督と脚本家のものであり、レバノン政府の政策や立場を表すものではない」と表示されます。

パレスチナの過去と現在を分かっている人でないとここで描かれていることはイマイチ理解できないでしょう(それは私です)。しかしそれを分かっている人でもここに出てくる人たちの気持ちや生き方は実感できないでしょう。それが分かるのはこの地で生きてきた人たちだけだと思います。
トニーとヤーセルを見ていてそれをひしひしと感じました。彼らの信条や心の傷は細胞の中に深く刻み込まれているものであると。一番印象的だったのはヤーセルがトニーの職場に一人で行くシーン。根深い憎悪を感じました。

それはともかくそもそもの事の発端は、歴史、民族、政治云々以前にトニーの無神経さ。バルコニーの配水管から落ちた水がヤーセルにかかった。あの配水管は有り得ません。そもそもあの配水管自体が違法。通りに面しているのに直接通りに水が落ちる様になっている(なのでヤーセルにかかった)。トニーはそれを裁判で指摘された時に(配水管の違法は)「皆やっている」と言っていた(言い訳です!)。ヤーセルがトニー宅に配水管の確認に行った時も横柄な態度で追い返した。挙げ句に作業員に水がかからない様にヤーセルが補修工事で取り付けた配水管を金槌で破壊!誰が見てもケンカ売ってます。そしてヤーセルが暴言を吐きトニーも吐きヤーセルの手が出てどんどんこじれていった。トニーは謝罪を要求し、ヤーセルは謝らなかったので裁判になった。
つまり元凶はトニー宅の違法配水管と横柄な態度。身から出た錆なのに自分だけ謝罪を要求するなんてふてぶてしい。ヤーセルの奥さんが言っていた「喧嘩両成敗では?」が正しいと思う。
どこにでもいますねこういう横柄な人って。

怒り心頭の男性たちに対して公平さを失わない女性たちが印象的だった。弁護士の父娘も劇中の素晴らしいスパイスだった。娘が父親に言う「勝てると思っているの?」が印象的。

役者も良かったし(ヤーセル役のカメル・エル・バシャがベネチア国際映画祭で男優賞を受賞。私もトニーも良かったけれど、ヤーセルの演技の方が痺れた)、映画的演出もよくできていると思いました。
特に二人がそれぞれ自分の車で同じ場所から去る際、運転席に乗り込もうとしてドアを開く方向が鉢合わせになる時(テニスでゲーム間に両選手がコートを移動する時に交差するのと似ている。立ち止まって相手選手を先に通す選手とそうでない選手がいる)。車に乗り込んだ二人を窓越しに直線に写す構図、ヤーセルの車のエンジンがかからないのをトニーがバックミラー越しに見るシーン。戻ってくるトニー。あの一連がとても素晴らしかった😢✨

個人的に好きじゃなかったのはラストシーン。二人が裁判所を去る時に立ち止まってお互いを見つめあうシーンに作為的なものを感じた。ああいう演出でもいいけれどちょっと現実的ではないので、一瞬見るだけにした方が良かったと思う。

原題からすると邦題は意味不明。

お勧め作品です。

★★★★★★☆












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