2018 99分 イギリス/ニュージーランド
「ロード・オブ・ザ・リング」シリーズのピーター・ジャクソン監督が、イギリス帝国戦争博物館に所蔵されていた第一次世界大戦の激戦地、西部戦線で撮影された未公開映像を、最新の映像技術を駆使してカラー化し、鮮烈かつリアルに現代に蘇らせた衝撃の戦争ドキュメンタリー。100年以上前に生きていた兵士たちと彼らが過ごしていた過酷な戦場の一部始終が、圧倒的な臨場感で生々しくも身近な存在として観る者に迫ってくる。
allcinemaより
『1917命をかけた伝令』を観たばかりなのでとてもタイムリーでした。同じ時代同じ舞台の映画です。 1917はフィクション(実話ベースの様ですが)。こちらは実録です。実録‼️元からドキュメンタリーは好きですが、ドキュメンタリーが最寄りの映画館で上映されることは滅多に無いので是非観たいと思いました。
とても興味深い内容でした。貴重なものを観させて(聴かせて)もらいました。ナレーションは全て帰還兵達のインタビューの肉声です。これを聴くだけでもとても貴重でした。「戦争が始まると聞いた時ドイツ人たちと会食をしていた。今日のところは何も無いことにして会食を続けた。明日から戦えばいい。」等映画のワンシーンの様な証言が沢山ありました。100年前のモノクロで無音の映像を現代のテクノロジーを駆使して色と音を付け躍動感のある映像にリストアされています。無声時代の早く動いて見える映像も自然な動きに。リストアの専門家から見てもとてもハイクオリティーな内容らしく、絶賛されています。上のトレイラ-を見てください。本当に素晴らしいですよね。実際私もカラー映像はとてもナチュラルで違和感が無かったので、一瞬100年前にもカラー映像ってあったんだと思ってしまった程です。100年前の人たち、風景なのに本当に生き生きとしていて目を見張りました。映像の兵士達の口の動きを読んで声をイギリス訛りでつけるという地道な仕事にも感動しました。
入隊から訓練、前線に赴くまでの過程など初めて見て勉強になりました。全てが興味深く(別に特に戦争映画のファンではないのですが)ゲートル(つい最近まで存在を知りませんでした)を巻いた足元のアップ一つも見逃せませんでした。『1917』で有刺鉄線に絡み付いたまま亡くなっている兵士、馬の死体、鼠、川に積み重なっている土左衛門(兵士の遺体)等を見ました。それらがリアルで出てきましたが、やっぱり実録だと有刺鉄線のバリケード一つとってもリアリティが違いました。塹壕も印象的でした。幅が狭くジグザグになっている塹壕を初めて見ました。1917では伝令に出発する二人が上司に、砲弾の穴に落ちると出られないから気をつけてと言われていましたが、本作でそこに隠れて命拾いをした証言があり、興味深かったです。そう言えば戦場でタピオカを食べていたという話も初めて聞きました。そんなに昔からヨーロッパにもあったのですね。私は約100年後にスイーツとして初めて食べたのです👀
何よりも印象的だったのは兵士達の笑顔です。死と隣り合わせでも悲壮感が無いのですね。「どの瞬間も楽しんだ。それがイギリス人だ。」私の知人のイギリス人も正にそうでした。人生で退屈したことは一度も無いと言っていました。一番驚いたのは戦争が終わっても国に帰りたくない、仕事が無いから。と言っていたこと。もっと驚いたのは帰国後人々に無視されたという話。帰還兵は英雄だと思うのですが、国の人々は全く興味が無く、逆に避けられたと。それは初めて聞いた話で凄く意外でした。1914年から1918年の間に亡くなったイギリス兵は100万人。言葉もありません。
IMDbのレビューではこの作品を是非学校で上映するべきというレビューが沢山ありました。そうすれば今後の世の中はもっと平和になるからと。私も若い人たちに是非見て欲しいと思います。一つ印象的だったことがあって、1917は私が観たシネコンの一番大きいシアターで上映されていたのですが、本作は一番小さいシアターで上映されていて、観客も私だけでした。一人というのはたまたまかもしれませんがこの事実が何だか皮肉だなあと思ってしまいました。これがエンターテインメントの図式だとは思うのですが(例えばキュアロンのROMAは描かれていることは100%真実だそうですが、もしあれがドキュメンタリーだったらあんなに話題になりませんね)、本当に素晴らしいと思うので多くの人に見てほしいです。
もう一つ。今回字幕の素晴らしさを実感しました。と言うのはIMDbのユーザーレビューで、アメリカ人の耳にはイギリス訛りの英語がとても聞きづらい。バックのノイズで余計聞きづらいというのがあったからです。字幕だとそういうことはありませんね。最近は邦画でも字幕つきのものがありますね。確かに字幕があった方が確実に台詞が分かっていいと私は思います。しかし本作は字幕を追うのは結構大変でした。字幕が左右に同時に出る時もあったりして、全体的に字幕の量が多かった気がします。最初から最後まで字幕を忙しく追い続けなければならず、映像も細かいところまで観たかったので忙しかったですが、本当に観て良かったです。
★★★★★★★★★