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誰がための日々

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2019    102分 香港

これが長編デビューとなる香港の新鋭ウォン・ジョン監督が、母親の介護をきっかけに人生の歯車が狂ってしまった若者を主人公に、現代の香港社会が抱える諸問題を活写し高い評価を受けたヒューマン・ドラマ。主演はショーン・ユーとエリック・ツァン。
 かつてはエリート社員として婚約者ジェニーとの明るい未来を信じていたトンだったが、母親の介護のために仕事を辞めざるを得なくなる。トラック運転手の父親は家に寄り付
かず、弟はアメリカに行ったきり戻ってこない。母を施設には入れたくないと一人で頑張るも、次第に介護うつになり、ついに事故を起こして母を死なせてしまう。結局トンは躁鬱病で措置入院となり、1年後に父親が引受人となることでようやく退院が許される。しかし久々の再会に、父も息子も互いにどう接していいか分からない。そんな2人は、父親が暮らすフロアを板で仕切っただけの狭い部屋で、ぎこちない共同生活をスタートさせるのだったが…。

allcinemaより

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原題の『一念無明』は翻訳機で調べたら『無知』という意味でした。
脚本に惚れ込んだ主演のショーン・ユーとエリック・ツァンがノーギャラで出演したそうです。

暗い話なんだろうなとは思っていましたが、本当に暗くて辛い話でした。体調が悪い人や気分が落ち込んでいる人にはお勧めしません。しかしこの映画を見て自分はこの人たちよりずっと恵まれていることを実感して有り難く思う人も多いでしょう。

トンは仕事を辞めて母の介護を一人で引き受けた結果、鬱になり介護中の事故で母を失い、婚約者とも破談し全てを失う。一年措置入院した後に父親が身元引き受け人となってトンを迎えに行くところから物語は始まります。お互い疎遠だった為とまどう2人だったが、過去に家族と向き合わなかった父親はこれからはトンときちんと向き合うと心に決めていた。唯一そこに救われました。長距離トラックの運転手をしている父親は薄い壁一枚で仕切られた狭い部屋に暮らしている。そこで二人の生活が始まった。何とか社会生活に戻ろうとするトンだったが彼の過去を知るとどこも採用してくれない。ある日念願だったジェニーとの再会を果たし光が差したかに見えたが、ジェニ-の深い心の傷をつきつけられ暗闇に突き落とされる。そのままスーパーに直行し(気分を高揚させる作用があることから)チョコバーを何本も貪り食うトンの姿に胸が引き裂かれた。そんな彼を周囲の人々は好奇の目で見、スマホで撮影し「変な人」として動画サイトにアップしそれが拡散する。二人が暮らすアパートの住人も知るところとなり退去を迫られる。怒りもせず「出ていくから」と言う父。「でも息子の心を掻き乱さないでくれ」と。心に残るシーンでした。

タイトルの無知というのは世間のことであると思い知らされます。トンが唯一心が通う存在なのが同じアパートに暮らす男の子。屋上で一緒に家庭菜園をしたり、トンが鬱で寝込んでいる時も男の子は壁越しにトンに話しかけます。心が通う二人なのに男の子の母親は男の子がトンに会うことを禁止します。屋上で男の子がトンといるのを見た住人たちは騒然とします。二人はただ話しているだけなのに。お母さん全然分かってない。
 トンの父親はトンカチを枕の下に入れて寝ている(何故かは不明。防犯の為と思う)。トンが父親に「俺は異常か?異常はそっちだろ。トンカチなんか敷いて寝て。おかしいのはそっちだ‼️」と叫ぶシーンが象徴的です。実際この映画の中で一番まともなのはトンに見えます。一番酷いのはトンのお兄さん。アメリカで就職してそれっきり。困ったお父さんが久しぶりに電話したら開口一番「帰れない」と。トンは病院に戻してお父さんも老人ホームに入ればと。金は心配しなくていいと。失望したお父さんは「なんでも人任せなんだな」と言って電話を切ったあとに泣き崩れる。亡くなったお母さんはずっと長男の迎えを待っていたが来なかった。こんな息子じゃもう会いたくもないでしょう。その代わりお金を沢山出してもらえばいいのに。お金を出してくれる気があるだけまだいいよね。世の中には会いにも来ないしお金も出さない人も沢山いるだろうから。でもお父さんは長男にお金を期待していたのではない。だから失望した。

この父子の不幸は父母の不幸な結婚から始まっています。奥さんは実家が裕福だったらしいですがお父さんと結婚したことを後悔した。お気に入りは長男だったが見放され後悔だけの人生だった。それでも天涯孤独の人だって沢山いるのだから次男が傍にいて面倒を見てくれるだけ幸福だと思うのだけど。お父さんも家庭にはいなかったけどお金は入れてくれていたようだし。とにかく不幸だったのでその不幸が次男に受け継がれた。やっぱり結婚は一生添い遂げられると確信できる人としないと子供たちが不幸になるね。まあ先のことなんて誰にも分からないけれど相性と愛情は大事。勿論お金も。こういう映画を見ると不幸の根底には必ず貧困があるのでその事実がとても悲しくなる。

お父さんがトラック運転手で疲れた身体に鞭打って働く様が『家族を想うとき』と重なりましたね。仕事中の車内でペットボトルに用を足すシーンが本作にも出てきました。そうやって働いて育ててもらったのにアメリカに行ったきりの長男はやっぱり酷いね💢

良い映画だと思いますが、悲惨な現実を描く以上のものが無かったので物足りなさがありました。もう少し何かプラスαが欲しかったですね。役者は素晴らしかったと思います。この監督の次回作も見たいと思いました。

★★★★★★









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