自転車泥棒
- 2020/06/19
- 13:14

1948 88分 イタリア
長い失業の末、映画ポスター貼りの職を得たアントニオは、シーツを質に入れ、代わりに仕事に必要な自転車を請け出し、六歳の息子ブルーノを乗せ町を回るが、ふとした隙に自転車が盗まれてしまう。それなしでは職を失う彼は、無駄と承知で警察に行くが相手にされず、自力で探すことにするが、ようやく犯人に辿り着いたところで仲間の返り討ちに遭いかけ、思い余って今度は自分で自転車泥棒を働くが……。
allcinemaより
いつか見なくてはと思っていた伝説の名作やっと見ました。切ない物語でした。
ドキュメンタリー風の映像がリアリティーがあって良かったです。
感想を一言で言うと、この国のこの時代の市井の人にとって、中古のごく普通の自転車一つがこんなにも遠いのだということでした。
私はこの映画を見て思い出したのが『マンマ・ローマ』でした。時代はマンマ・ローマの方が少し後なのですが、基本的に貧困によって苦労していること、何よりもアントニオもマンマ・ローマも家族の為に必死に頑張るのですが、どうしても上手くいかないところが同じなんです。
でも私はマンマ・ローマは理解できましたが(息子を持つ母親という立場が同じところもあり)、アントニオははっきり言って嫌いです。藁にもすがる気持ちというのは分かるけれど関係ない人をストーカーしたり、何よりも何も悪いことをしていない息子に手を上げ、その後息子に謝らなかったのが人として嫌いです。八つ当たり以外の何物でもない。でも息子は父(アントニオ)を慕い続け自転車探しを一緒にする。
私が一番切なかったシーンは二人でレストランに入るシーンです。自転車はまだ見つかっていないけど、とりあえず何か食べようと店に入る。やっと笑顔を見せるアントニオ。でも息子はアントニオに気を使っていてぎこちない。それでもやっと空いていたお腹を満たした。親子での束の間の休息だけれど、きっとこの先も上手くいかないのだと思ったら二人を見ていて泣けてきた😢案の定この先事態はもっと悪くなる。(それでも『マンマ・ローマ』よりは遥かに良かったけれど)
ラストシーンは誰もがこれからこの一家はどうなったのかと思いを馳せるでしょう。しみじみとした余韻が残ります。
息子役の男の子の演技が本当に素晴らしくて、この世に数々の名子役はあれど、私は今までの映画人生でこの男の子がベストでした。
アントニオ役の人はこれが映画初出演で、この役をきっかけに俳優に転身したそうですが、その後の俳優人生は奮わなかったと聞き切なかったです。
特にドラマチックな展開は無いのですが、本当にドキュメンタリーの様で身につまされる映画でした。ヒューマンドラマファンにはお勧めです。
★★★★★★★