はめ殺し窓 向田邦子
- 2020/06/24
- 16:45
異動で閑職となった江口は、くたびれた家の2階をふと見上げると、“はめ殺し窓”から、自分の母親のタカそっくりになった、一人娘の律子がのぞいていたのに気がついた。一番似てほしくない人間にますます似てきた…。江口は娘の姿を見て、5年前に亡くなった生前のタカの姿を思い浮かべてゆく。痩せて貧相な父に対し、母タカは背が高く、美貌の持ち主であった。しかも、父以外の男性とも関係が…。嫉妬に苦しんだ父の人生。父の二の舞にはなりたくない。そう誓った江口であったが、次第に自分でも気づいていなかった母タカへの思いを知るのである。
番組オフィシャルウェブサイトより
ラジオ文芸館で聞きました。とても印象に残る話でした。一言で言うと生涯妻と母と言うよりも女だったタカに振り回された夫と息子の話です。
こういう女性いますね。個人的には羨ましいです。
☆ネタバレ注意☆
タカが他の男性の元へ息子を連れて出奔し、そこへ夫が乗り込んできてタカに手を上げたが、結局頭を下げて家に戻ってもらった件。
家の羽目殺し窓から向かいの高校の上半身裸の男子生徒たちが体操するさまをうっとりと眺めていたタカ。夫が屋根から落ちたのはその窓を塞ごうとしたからではないのか。
タカが亡くなった時に持っていた百貨店で買ったネクタイ。おそらくタカが想いを寄せていた人がいて、その人へのプレゼントと思われる。タカには生涯想い人がいたのではないか。
。。。全てが生々しいエピソードですね。向田邦子は私は読んだことはありませんが、昔ドラマの「阿修羅のごとく」を見てドロドロだなあと思いました。この短編も人間の業をよく表しているなあと思いました。
「思い出トランプ」という短編集に収録されている様ですが、本作をベストに挙げる人が多い様です。