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母の遺産☆水村美苗


もう結構前ですが読みました(2日で読破←ということは結構面白かったのかな!?小説は長いと読むのに一年かかるので)

いつもの様にamazonで頼んだら大きな箱に真空パックみたいになって来ました







クラシックな雰囲気の装丁が素敵です









「産」の指輪が好きです












『金色夜叉』をフューチャーした口絵









内容(「BOOK」データベースより)

家の中は綿埃だらけで、洗濯物も溜まりに溜まり、生え際に出てきた白髪をヘナで染める時間もなく、もう疲労で朦朧として生きているのに母は死なない。若い女と同棲している夫がいて、その夫とのことを考えねばならないのに、母は死なない。ママ、いったいいつになったら死んでくれるの?親の介護、姉妹の確執…離婚を迷う女は一人旅へ。『本格小説』『日本語が亡びるとき』の著者が、自身の体験を交えて描く待望の最新長篇。

著者略歴 (「BOOK著者紹介情報」より)

水村/美苗
東京都に生まれる。父親の仕事の関係で十二歳の時に渡米。イェール大学および大学院で仏文学を専攻。創作の傍らしばらくプリンストン大学などで日本近代文学を教える。1990年『續明暗』で芸術選奨新人賞、1995年『私小説from left to right』で野間文芸新人賞、2002年『本格小説』で読売文学賞。2009年には『日本語が亡びるとき―英語の世紀の中で』で小林秀雄賞を受賞(本データはこの書籍が刊行された当時に掲載されていたものです)






たまたま雑誌で紹介されていたのを見て読みたいと思い買いました

大変著名な作家の方だそうですが存在を知りませんでした

レヴューを見ると一番多い形容が「美しい日本語で書かれている」というものでした

私は小説は殆ど読まないので他の本との比較はできないのですが個人的に印象に残ったのは「レエス」(レース)「畢竟」等のクラシックな言葉です
現代の小説で「畢竟」って言葉初めて見ましたね
今の人はこの言葉自体知らないでしょうね。「つまり」と言う意味です
これは愛用の青空文庫で読む明治の小説で見かける言葉です



内容は毒親(毒ママ)とそれに振り回される娘という内容です
ママは最期の最期まで私を苦しめるみたいな

感想はあまり感動しなかったしそんなに好きじゃなかったです
何か現実味を感じませんでした
特に後半が

☆以下ネタバレ多少あるかも☆


お母さんが段々衰弱していく過程で出てくる言葉、経鼻経管、胃瘻、誤嚥性肺炎、お母さんが亡くなった後の葬儀屋との打ち合わせのところなどは全部自分も父で体験したのでここら辺はリアルだな~と思って実体験を一つ一つ思い出して重い気持ちになりました

只一つ引っかかったのが嚥下が困難になってきているお母さんが食事中に美津紀さんが他のことをしていお母さんが咽る描写がありましたが普通同じ部屋の中にいるのに他のことするかなぁ?食事中に見ているのは基本だよね?と気になりました

他に個人的に一番好きじゃなかったのは病院で悲しみのオーラを纏った男性と出会うシーン
「あ~この人と後で旅先で出会うんだな~」みたいな感じで興醒めでした
病院で印象的な出会いなんてものは普通はありません(あることもあるらしいというのは知ってるけど普通はないです。私は経験無いです)

後半の旅先の湖畔のホテルが舞台の推理小説調が最も現実感が無いな~と思いました
登場人物の中の一人の素人探偵みたいな老婦人がホテルのロビーで編み物をしている描写は完全に「なんちゃってミス・マープル」だな~と思いました(笑)

後半は全てが取ってつけたような雰囲気でリアリティーのかけらも感じなかった
敢えて推理小説調にしたらしいですが浮いたと思います

この作品の一番がっかりするところは結局世の中はお金だと改めて思わされるところです

娘たち(奈津紀と美津紀)は我侭なママに長い間振り回された
でも二人ともママのお陰で留学をさせてもらいお陰で奈津紀は玉の輿に乗り美津紀も留学先で夫と出会い(後に破局するとしても)今の職も留学のお陰で得られている
そしてママは結構な額の遺産を遺してくれた
だから美津紀は50過ぎて離婚しても何とか一人でやっていくことができる
ママの強烈な人格は二人の心にトラウマを残したかもしれないけど現実を見れば生涯生きてける糧を遺してくれたのですから
しかもこの二人は在宅介護してないのでそこもママに感謝するべきではと

まぁでもそれ以外を見ると実際酷いママですね
特にパパを見捨てたところは私でも許せない!!
ママがパパ(ママの配偶者)の生前からパパの生命保険が降りたら旅行をしようと娘と話すくだりには呆れてしまった
こういう人なら死んでほしいと私でも思うかな~と
お金を遺してくれたことに感謝はするけどずっと嫌いかもしれませんね

でも人間は死んでしまった人のことは許せるんですよね
大体の場合は・・・


それはともかく凄いママだな~と思いました
本当にエネルギッシュな人というか
私なんかこの齢(まだ劇中の美津紀さんより若いですが)で既に人生半分終わった気がするけどノリコさん(ママ)は私の齢の時にはまだ元気バリバリで花を咲かせています
凄いな~この元気は何処から来るのかな~と
大正生まれの人の人のエネルギーなのかな~と思う
そのエネルギーが娘たちに遺産を遺したことにも繋がってるからやっぱり人間エナジェティックじゃなくちゃなんですね~

ノリコさんもいよいよ御高齢で体の自由が利かなくなった時に自嘲気味に言う台詞がとても印象的でした

「さすがのノリコさんももうおしまいよ。」

この台詞がこの小説の全ての中で一番印象的でした

どんなにエネルギッシュな人でも悟る時が来るんだな~・・・と


あと物語の終わりも尻切れトンボの様な印象がありました

おそらくはレヴューを見てもこの方の過去作品の方がいいみたいです
機会があれば過去作品も読んでみたいと思います

ところでこの作品の美津紀さんは美苗さんが日本(千歳船橋)に残っていた場合の分身(パラレルワールド)だと仰っていたのが興味深かったです

ご興味のある方はご参照ください

http://sankei.jp.msn.com/life/news/120517/bks12051708060000-n1.htm




あと美津紀さんの旦那さんの出身が新取手の設定だったんだけど以前よく新取手に行っていたので親近感を感じました(笑)
あと金色夜叉、ボヴァリー夫人、ラ・ボエーム等の有名作品(これ全部映画化されてますね)の引用が出てくるのでそれも私は好きでした

今水村さんのお母様水村節子さんの著書『高台にある家』を読んでいます
先日単行本が発売されたので買いました
節子さんの自伝的小説です

今まだ途中ですが昔に憧れる自分にはとても惹かれる描写が出てきます

例えば小学二年生のときの昼食のお話
殆どの子供は学校から家に帰って昼食を摂っていて節子さんもいつも帰って食べていた。お母さんはお茶漬け程度は用意していたがたまに節子さんにうどん屋さんにうどんを注文に行かせたり自宅の隣の一銭洋食を買わせたりたまたま大通りで鈴を鳴らしているおでん屋さんの屋台から選ばせたり或いは盤台を担いでくる魚屋さんからまて貝を買い火鉢で焼いてくれたりしたと
(本文とは違いますが要約して書きました)

昔は風情があったんだな~と思いました
学校給食はあらゆる面で(時間、栄養、衛生)合理的なのでしょうけど家に帰って食べるというのも色々と良い面があったのではないでしょうか
外国では朝食を登校前に学校の近くの屋台で食べている子なんかいますよね(TVで見たことがあります)
こういう描写を読むと日本も昔の方がある意味融通効いていたんだな~と思いました

そう言えば盤台を担ぐ魚屋さんも明治の小説によく出てくるけど自分は一度も見たことが無いので焦がれます

こちらの小説はノンフィクションと思うとより興味が湧きます

読み終えたらまた記事を書きたいと思います

コメント

No title

りゅうちゃん

これね~元気は出ない作品ですね
でも身につまされるところはありましたね

うちの父親は長く寝込みませんでしたし綺麗な死に際でしたのでとても立派だなと思いました

No title

ん~~なかなか深い内容ですね!

私も介護経験やら見送りやらしてるので、この本を読んだら色んなことを思い出したりするんだろうな~って思いました。
でも、この本の中の方とはしてきたことは全く違いますけどね(^^)

かみえるしゃんがこの本を読んだ感想をしている文章を見て、きっと私も同じように感じるのだろうな~って思いました

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三匹のにゃんずと地味に暮らしています。
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