ピクニック
- 2020/09/15
- 16:24

1936 40分 フランス
まさに父オーギュストの絵画的世界が現出したかのような、ジャン・ルノワール珠玉の掌編。明るい陽射しにむせ返るような自然美の中、パリから田舎にピクニックにやってきた一家の大はしゃぎの一日の傍ら、秘かに紡がれる若い男女の愛をみつめる。青年と娘は小舟に乗り川を流す。水面を舐めるようなカメラの動きが娘のひらめきを伝え、微妙に揺らぐ。いつしか二人は岸に上がり、森の小鳥のさえずりを聞くうち結ばれる。娘の顔に一粒の涙が光ると、雨雲は見る間に拡がって、川面に大粒の雨がいくつもの波紋を作り、あたかも乙女の流した涙に空がもらい泣きしたかに見えた。そして、ゆっくり溶暗の後、“月曜日のように悲しい日曜日がめぐり”と字幕が出て、結局、青年とは添い遂げられなかった娘の現実が寂しく映し出されるのである。モーパッサンの小説『野あそび』を元に'36年に撮影された作品だが、あまりの出来の良さに製作のブロンベルジェが長篇に仕立て直すことを画策したものの、結局ルノワールがイタリアを経てアメリカに亡命したこともあり、10年の後、助監督だったJ・ベッケルらが再編集して完成させた。2015年6月、デジタルリマスター版にてリバイバル上映。
allcinemaより
お父さんの絵が好きで一度だけ本物を見たことがあるのですが、その時の感動を忘れることができません。本作は正にその時代の(お父さんの絵画の時代)設定で、本当にその世界の女性たちの服装と髪型をしているのですよね。それだけで感無量のものがありますが、内容にもとても感動しました。風景が美しくて特に嵐になるシーンとレストランの窓を開けた瞬間にブランコに乗る女性が現れるシーンが息を呑む素晴らしさです。それと猫好きにはお祖母さんの膝の猫も可愛すぎます。でも一番衝撃だったのは女性が男性と再会した時の表情です。あの表情が全てを語っていましたね。端から見れば大してイケメンでもないし単なるチャラ男だったと思いますがそんなことは関係ない。人を愛するのに理由は要らないのです。
しかし凄い話でした。マディソン郡の橋やタイタニックの様な、数日間の、でも生涯唯一の愛になった物語がありますが、これはほんの一瞬がそうなった話でした。ほぼ数時間(にも満たないかも)。ほんの束の間。それが凄い😮私の感覚では泉鏡花の『外科室』の次に凄い。
ずっと心に残る作品になりました。
素晴らしい作品をありがとうございました。
★★★★★★★★