マイ・ブロークン・マリコ 平庫ワカ
- 2020/10/29
- 14:52

解説はAmazonより
たまたまラジオで存在を知りました。その時番組に出ていた某女性作家と女性アナウンサーが絶賛しており、特に作家の「続編が許されない作品(内容)」の言葉がとても印象的で興味を持ちました。
KindleにあったのでサンプルをDLして読んでみました。なかなか良かったので購入しようかと思いましたが、Kindle版の値段が高かったので(644¥)、漫画に644¥は私的には無いかなあという感じなので、定価だったら買わなかったと思うのですがポイントで195¥で買えたので購入。
結構序盤から泣けて、泣きながら読みました。私漫画を読んで泣いた記憶はありません。感動したことは沢山ありますが。こんなに泣きながら漫画を読んだのは多分初めてです。
感想を一言で言うなら心が痛い物語です。そして人生っていうのは何でこんなにしんどいんだろうと思う話です(書いていて思い出して泣けてくる😭)。
二人と言うかシイノを見ていて、今時こんな風に他人の為に命懸けになれる人っているんだろうか(しかも死んだ人の為に)と。昔田辺聖子のエッセイで読んだ言葉を思い出した。「その人の為に腕一本くらい失ってもいいという覚悟が無ければ友達なんてやるもんじゃない」
シイノは劇中で言っている。「(あんたはどうだか知らないけどね)あたしには正直あんたしかいなかった」(最も印象的だったシーンの一つ)。
その言葉に嘘偽りが無いことがシイノの一挙手一投足から伝わった。シイノは本当に命懸けだった。だから彼女を見ていると涙が出た。その純粋な気持ちに。
走れメロスも思い出した。メロスは友人が死なない為に走り、シイノは死んだマリコの為に暴走した。美談は勿論メロスの方。でも根底にあるものは同じだと思う。迸る熱い思い。
本作にはアンチの批評も多い。二人のことを只のメンヘラで自分勝手な人たちであり、言動も支離滅裂。自分勝手な人(マリコ)が死んでも悲しくないと斬り捨てているものがあった。感想は人それぞれだからそういう意見もあるだろうとは思うが私は違和感を覚えた。少なくとも親しい人や身内が自死した人からはこういう感想は出ないのではないかと思う。
二人の言動は確かに常軌を逸しているが、それには理由があり、それを描いている話なので。それに共鳴できる人は人の心の闇や痛みが分かる人だと思う。今年のコロナ禍以降の辛い世相の中でまだ若い著名な人たちの訃報を聞く度に私は思う。この世には頑張っても救われない心が沢山あるのだと。そんな言葉で片付けるなと叱られるかもしれないし、辛くても死んではいけないけれども、他人が救うことのできない心があるのは事実。
30年前文通していた人との手紙の話。その人は岡田有希子の大ファンだったが「彼女が自殺してがっかりした。そんなに弱い人だったのかと。」私は返信に書いた。そうすることしかできなかった人の気持ちに寄り添ってみてほしいと。
良い作品と思うけれどしりすぼみの感はあった。
★ネタバレ注意★シイノがマリコの手紙を読みながら「うん」と一言言って物語は完結する。賛否分かれる結末だった。私は「え⁉️これで終わり⁉️😮」とちょっとびっくり。唐突な幕切れ感。私は匂わせでも良いのでマリコの手紙の内容の暗示が欲しかった。それよりもマリコの父親のその後が知りたかった。どういう憐れな末路だったのか。本作で一番違和感を感じたのはシイノがマリコの遺骨を奪おうとした時にマリコの父親がマリコの名を呼び涙ぐんだこと。鬼畜に涙があるなんておかしい。
色々なことを思い出したり考えさせられる作品でした。
本作はおそらく映画化されるのではないかと。実写で。でもこの世界観を実写で表現するのって難しいだろうなあと思います。特にコミカルな部分。役者さんも大変でしょうね。
本作にはもう一つ別の作品が収められていました。マイブロークンマリコとは雰囲気の違う海外が舞台のハードボイルドな作品で、それもとても良かったです。作者は元からハードボイルドな作品を描いていたらしく、そっちの方が好きだという意見もありました。
もう一つ短いオマケ(それはマリコ関係)もあって、それは本当に泣けます。
この記事を書くのに読み直したらまた泣いてしまい、ティッシュを抱えて鼻をかみながら書きました😭
個性的な作品なので好みは分かれるでしょう。個人的には絵があまり上手くないと思ってしまいました。でも絵が好きだという人も多いですね。
満足度(10★満点)
★★★★★★
お勧め度
個人的には読んでみて欲しいです。
親しい人を自死で失っている方には辛いと思いますが。