ヒルビリー・エレジー ー郷愁の哀歌ー
- 2020/11/30
- 20:04

2020 116分 アメリカ
全米で一大ベストセラーになったJ・D・ヴァンスによる回顧録『ヒルビリー・エレジー アメリカの繁栄から取り残された白人たち』を「ビューティフル・マインド」「ダ・ヴィンチ・コード」のロン・ハワード監督で映画化したNetflix作品。アパラチア山脈の田舎町に暮らす白人家族の3世代を主人公に、荒廃した町の悲惨な日常と、貧困が親から子へと引き継がれ固定化されていく白人貧困層の過酷な現実を描き出していく。主演は「メッセージ」「バイス」のエイミー・アダムス、共演にグレン・クローズ、ガブリエル・バッソ。Netflixでの配信に先立ち、一部劇場でも公開。
allcinemaより
原作は未読です。とても良かったです‼️映画を見て思ったのは多分ここに収まりきらないストーリーが沢山あるんだろうなと。原作を読んでみたいと思いました。
とにかくエイミー・アダムスとグレン・クローズが素晴らしいの一言でした。エイミー・アダムスの役は難しかったと思います。シングルマザーで子供を育てている役で、子供たちのことは愛していますが、元からとても感情の起伏が激しく、ドラッグをやる様になってからは正気を失うことが多々あり(そのとばっちりを家族が受けました)。そういう役を熱演していました。個人的に一番感動したのはグレン・クローズ。子供たちの祖母役です。お母さん(エイミー)に代わって自身も高齢で具合も良くないのに真っ直ぐな愛でJD(孫)の面倒を見ました。そのお陰でJDは道を外すことなく立派な大人になりました。しかも最後に御本人たちの映像が出るのですがグレン・クローズが本当に御本人(お祖母ちゃん)にそっくりなんです。魂が乗り移ったのではないかと思う位。メイクさんも優秀なのでしょうね。
個人的には複数の賞を受賞した『天才作家の妻』よりも感動したのでこの役で是非オスカーを獲ってほしい‼️と思いました。
本作のJDのお祖母ちゃんを見ていて、自分も子育て中母が無償で私の子達の面倒をよく見てくれたので(私はドラッグもアルコールもやっていませんが至らない母でした)、そういう思いと重なってしまって泣かずに見れないというか胸が熱くなるものがありました。
私が感心したのは子供たちがお母さんを見捨てなかったことです。昨今は親子の絆が簡単に切れてしまう時代に思えるのですが、これから就職しようという人生で一番大切な時に又ドラッグに手を出したお母さんの為に故郷に帰ったJD。お姉さんも仕事も家庭もあって大変だけど姉弟二人で精一杯お母さんをサポートする姿に感心しました。お母さんは幸せだと思います。
本作を見て思い出したのは『ガラスの城の約束』です。両親がネグレクトの為苦労して育ったコラムニスト、ジャネット・ウォールズの回顧録が原作です。壮絶な話で忘れることができません。彼女も本当に大変な思いをして育ったのですが、両親を見捨てませんでした。『ガラスの城の約束』の最後に、「(様々な大変な出来事から)心に傷を負っていても尚、家族でいようとする人々に本作を捧げます」の言葉(正確な言葉は覚えていませんがこの様な内容でした)が忘れられません。JDもお母さんが家も行くところも保険も無いのだけれど、とにかく何処かに入所しなければならない時に施設のスタッフに「母は行くところがありません。母を見捨てる訳にはいかないんです」と言っていたシーンが切実でした。
本作はJDの回顧録ですが、お祖母ちゃんは14歳で家族を捨てて駆け落ちしたというところから始まり、三世代に亘り本当に激動のファミリーヒストリーだなあと。ドラマチックです。
★★★★★★★★