泣く子はいねぇが
- 2020/12/23
- 22:50
2020 108分 日本
是枝裕和監督が企画を務め、「壊れ始めてる、ヘイヘイヘイ」の佐藤快磨監督が再び主演に仲野太賀を迎え、記念すべき劇場デビューを飾った青春ドラマ。ナマハゲで知られる秋田県男鹿半島を舞台に、父親になることから逃げてしまった青年が、やがて自らの人生を見つめ直して不器用ながらも少しずつ成長していく姿を描く。共演は吉岡里帆、余貴美子、柳葉敏郎。
娘が生まれたにもかかわらず、まったく父親としての覚悟が見えないたすくに、妻のことねは苛立ちを募らせていく。そんな中迎えた大晦日、たすくは参加したナマハゲのお祭りで大失態をしてしまう。ことねにも愛想を尽かされ、故郷を飛び出し東京へ逃げてきたたすく。そこでも居場所を見つけられないまま2年が経ち、ことねと娘のために再び地元に戻ることを決意したたすくだったが…。上映最終日に観てきました。レビューがイマイチ不評だったのでどうなのかなと思いましたが、普通に面白かったです。
上の解説の「青春ドラマ」というのはちょっと違うかなと。良き夫に、父親になろうとする話なので。
ダメンズの話です。端から夫婦仲が限界なのが見てとれます。たすくが娘の出生届けを記入ミスしているのを見つけて奥さんが指摘します。たすくは、あれ、マジ?てへへの様な感じ。それに対し奥さんは「ちゃんとしようよ」と眉間に皺を寄せながら言います。このシーンを見てこの二人無理だなと。こういうタイプの男性には、こういう場面で笑って流せる奥さんじゃないと無理です。確かに出生届けの記入ミスは駄目です。でもわざとやっているのではないし書き直せばいいですよね。奥さんにはもうそういう余裕が無い。ここまでのたすくが酷かったのでしょう。もう二人の溝は深かった。案の定二人は破局に向かいます。
たすくは東京に行き二人別々の人生をスタートさせましたが、たすくは未練たらたら。ダメンズだけど妻(元)と娘への愛情はとても深い。東京で若い女の子に誘われても「俺父親だから」と断る位。根は真面目なんですよね。でも行動が伴わない🙇地元に戻っても相変わらずダメンズ。呆れ果てたのは母親のアシスタントとしてアイスクリーム販売の現場に行ったときに、仕事用の荷台に乗って(荷台を遊具にして)広場をぐるぐる回っていたこと。あんな間抜けな人見たことありません😮荷台は商売道具。広場には仕事で行ったのです。これだもの。愛想つかされる訳だよね。でもあの演出は違和感がありすぎました。
奥さんは新しい人生を歩み始めていました。女は一度決心したら切り替えが早いのです。取り残されたのはたすくの心。そこで彼はまた痛いことをやります。
たすくの気持ちは分かる。でも最後にとった行動も結局自分のことしか考えていないし、あの行動は自己満足以外の何物でもないです。愛情はああいう形で示すものではない。しかも(ネタバレになるから詳しく書けないけど)パフォーマンスの内容が変則でしたね。よくは知らないけど普通は固有名詞は無しでしょ?あれもかなり違和感がありました。でも不覚にもエンドロールが始まった瞬間どっと涙が出ました。
人生はうまくいかないね。でもこれが人生。ここからが踏ん張りどころ。お父さん頑張れ。と、エンドロールを見ながら思いました。
一番感心したのはたすくの愛情深さです。離婚したらすぐに新しい彼女を作って子供にも全く会いに来ないという人も少なくないと思うけど、彼は真逆なんですよね。想いは募るばかり。今どきこういう純粋な人もいるんだなあと思う程でした。でも愛情だけでは生きていけないからね。人生は厳しいね😢
仲野太賀さんも良かったですが、個人的な発見は寛一郎さんでした。凄く雰囲気のある人でそこにいるだけで魅せます。素敵な人だなあと思ったらなんと佐藤浩市さんの息子さん。知りませんでした。どうりで素敵な訳だわ。
本作を観て『凪待ち』を思い出しました。こういう地元意識の濃い狭いコミュニティで生きていくのって大変なんでしょうね。
寛一郎さん演じるたすくの友人がたすくに「東京に無いもの(こっちには)たくさんあっべ」の台詞が印象的でした。きっとそうなのでしょうね。だから幸せになれるかというのは人によるのでしょうが。
エンドロールが始まってすぐに席を立った人がいましたが、最後にオマケがあったのでちょっと得した気持ちになりました。特に特別な映像ではありませんが。
違和感のある部分はありましたが、基本的に自分のタイプの作品だったので観て良かったです。
★★★★★★★