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Amazon プライム・ビデオより
メタラーの話と思い、一応メタルファンのはしくれなので見ました。初めこれは本人たち主演の再現ドラマと勘違いしましたが、ルー役がオリヴィア・クックだと気づいた時にそうではないと気づきました。しかしこの話の元ネタはデレク・シアンフランスのMetalheadという未完成のドキュフィクションフィルムだそうです。やっぱり。絶対にモデルがいる話の様な気がしました。こういう境遇を辿った人は実際にいると思うからです。耳の障害でミュージシャンを引退した人のニュースを覚えています。
いやはや。素晴らしい、激しい、重い、胸が張り裂ける、色々と考えさせられる話でした。Amazon やるね。なんと言ってもリズ・アーメッドの演技が素晴らしい。私はオリヴィア・クックは名女優だと思っていますが、彼女も素晴らしかったけれどリズ・アーメッドが素晴らしすぎて本作は完全に彼の映画だなと思いました。それから脇役のポール・レイシー(ろう者の支援センター代表ジョー役)がまた素晴らしい。彼がいなければ本作の輝きは半減したでしょう。両者はナショナル・ボード・オブ・レビューでそれぞれ主演男優賞、助演男優賞を受賞しています。
この映画の特徴は音ですね。無音になったり音が籠ったり金属的になったりします。それはルーベンの聴覚状態を表しており、本作の鑑賞者はルーベンの聴覚状態を共に体験することになります。とてもリアルでした。
★★プチネタバレ注意★★
タイトルが秀逸だと思います。ルーベンはメタラーだったのでその『メタル』の音と、彼は聴覚を取り戻すための手術をするのですが、それ以降彼が耳にする音はメタリックな音なのでそのWミーニングだと思うのですが。違うかな。いずれにしても音のある世界と無音の世界の対比がテーマなのでそれを象徴しているタイトルだと思います。
何よりもジョーの台詞が印象に残りました。
「朝の課題の時に静寂を感じたことは無かったか?(中略)私にとってはその静寂こそが心の平穏を得られる場所だ」
「難聴はハンデではなく治すものではない。私たちはそれをいつも心に留めている。」
「学者が来て偉そうに治してあげますとか言うけど治すところなんて無い」
imdBのレビューで難聴の当事者の方からのものがあり、人工内耳の手術の仕方、期間、費用などが映画では正しく描かれていないので、素晴らしい作品だがそこは原点とあり、そういう部分も勉強になりました。やっぱり当事者からの意見は貴重ですね。今公開中の『アウトポスト』も実際に現地で従軍していた人のレビューで「正しくない部分もあるが、大方は真実である。見てください」というのを見て、観たいなあと思いましたもの。観れるか分からないけど。
ということで本日オスカーのノミネートが発表されますね。私はあまり見ていませんが、とりあえず本作と、個人的に物凄く大好きだった『
ヒルビリーエレジー』、ヴァネッサ・カービーが凄まじかった『
私というパズル』が入るといいなあ。
ポール・レイシー(ジョー役)のカッコいいメタル手話パフォーマンス😉👍
★★★★★★★★