ハッピー・オールド・イヤー
- 2021/05/08
- 23:24

2019 113分 タイ
世界的にヒットしたタイ映画「バッド・ジーニアス 危険な天才たち」に主演し注目されたチュティモン・ジョンジャルーンスックジンが断捨離を決意したヒロインを演じ、モノを整理することで過去の自分と向き合い葛藤しながら成長していく姿を描いたドラマ。監督はタイの俊英ナワポン・タムロンラタナリット。タイのバンコク。デザイナーのジーンは、留学先のスウェーデンで学んだミニマルなライフスタイルを実践しようと自宅のリフォームを思い立ち、まずは家の中にあふれたモノを何とかすべく断捨離を敢行するのだったが…。
allcinemaより
前から気になっていたのですがとても好みだったので見て良かったです❗断捨離しなくてはと最近よく思っているのでタイムリーでもありました。断捨離の映画って沢山ありそうだけど意外にも?見たのはこれが初めてです。断捨離の番組はこんまりさんの番組(本作中にも登場)を初め、ドキュメンタリーで沢山ありますよね。でも映画は?パッと思い浮かびません。『アントキノイノチ』を想起しましたが、あれは遺品整理の話なのでちょっと違いますね。でも遺品でもそうでなくても自分に必要のなくなったものは全て遺品なのだと本作を見て思いました。
ジーンはスウェーデンの留学から帰国後仕事を始めるにあたり、自分のオフィスの必要性を実感。実家一階の改装を決意。しかし実家は物で溢れており、加えて母は猛反対。それでも断捨離を決行するが、途中で心が揺らぎ、捨てたゴミを積んだ回収業者の車を全速力で追いかけたりと幾多の困難が待ち受けていた。
ジーンは断捨離を通して様々なものに向き合うことになります。友だち。元彼。元彼の今彼女。家族。過去の懐かしく幸せだった日々。過去の自分勝手な自分。それを目の当たりにして葛藤する今の自分。断捨離はやっぱり気力体力共にエネルギーが要るなあと本作を見ても実感しますね。
☆☆一部ネタバレ注意☆☆
共感できるところも多々ありましたが、個人的に疑問だった部分もあります。大きく2つ。まず借りていたものや頼まれていたものを各当事者に返したこと。喜んでいた人もいましたが、大半は「何で今頃?」と戸惑いますよね。迷惑だと思います。実際ジーンにきつい言葉を浴びせる人もいました。元彼にはいきなり郵便で荷物を送りつけましたが、受けけとり拒否で戻って来たのでそれを持ってわざわざ元彼宅に向かうのです。どんだけ図々しい人なのかなと。
もう一つはお母さん。お母さんは一貫して断捨離も改装も反対でしたがジーンは実力行使します。これは本当に酷い。お母さんは「私の家よ」とはっきり言っていた。ジーン一家には事情はありましたが、お母さんは自分の家に満足して暮らしていた。それをいきなりジーンが破壊してしまったのです。ジーンはこれから稼いで将来お母さんを養うとは思いますが、それとこれとは別の問題だと思う。お母さんの心には生涯傷が残ったと思う。お母さんの性格上「却ってすっきりしたわ」なんて言いそうもない。これは考えさせられましたね。やっぱりジーンは自分勝手だ。
それ以外はよく分かるなあと思いながら見ていました。とくにジーンの元彼や今彼女、ジーンの友人の言葉が印象に残りました。またジーンのお兄さんの存在が和みキャラでとてもいいです。正直こんなに感動すると思わなくて、思わぬ拾い物でした。スピーディーで劇的な展開を好む人には向きませんが、普通の人々の日常の中のドラマが好きな人にはお勧めできます。とは言ってもこの数日間はジーンの人生の分岐点になったので彼女にとっては忘れられない時でしょうね。随分痛みを伴いましたが断捨離ってそういうことでしょうね。自分の歴史の一部を捨てるのですから。
でもジーンは仕事を始めるという大きな目的があったから頑張れたけどそういう目的が無ければここまで頑張れないかも😣
先の展開が読めてしまうところがあったのと如何にもな演出もちょっと気になりました。サントラの好みも分かれるかもしれませんね。私はサントラの音が大きいのが気になりました。
主演の女優さんが美人という感じじゃないけどモデル体型で、メイクをしたら映えそうなとても素敵な人。演技も良かったと思います。
個人的な話になりますが本作を見ていて思い出したのは父の遺品のこと。コレクターではなかったのでそんなに沢山のものは無かったですが、読書家だったので本棚には歴史小説が並んでいました。百科事典も。それと若い頃に筆で書かれた自作の短歌などもありました。母と姉はさばさば気質なので何の迷いも無く全てを処分すると笑顔で言っていました。ジーンのお母さんと反対のタイプかも。私はちょっと興味がありましたが意思表示をしない内にさっさと処分され。別にいいけど😅でも欲しいと言っていない父のアルバムが何故か私の元にあるのは勘弁してほしかったです(ほぼ仕事関係の写真)。これどうしようって時々思いながらずっと押し入れの中に置いてあります。私が死んだら誰か処分してくれるのでしょうか。
蛇足ですがこんまりさんと言えばブレイディみかこさんのワイルドサイドをほっつき歩けの中に、こんまりさんの魔法にハマったみかこさん夫妻の友人(男性。みかこさん風表現だとおっさん)の話があったのを思い出しました。生まれかわった我が家を見に来いとの誘いに早速友人宅に赴き家の中を見たみかこさんは思わず声をあげてしまった。それは「あまりにも物が無かった」から。以前はものに溢れていた友人宅が本当に必要最低限の家具以外何も無くなっていて、それはまるで寝室は病室、他の部屋も待合室の様だった。まるで死を待つ老人の様とばっさり切り捨てていました(笑)でも御友人本人は満足している様でした。断捨離も悲喜交々ですかね。ちなみに断捨離という言葉はこんまりさんの言葉じゃなくて別のどなたかの登録商標だとネットで読んだ様な記憶があります。なので断捨離という言葉は勝手に使ってはいけないのだとか。すっかり定番の日本語になりましたが。
先ほどネットに興味深い記事がありました。
これはたまたまこのフィルムが長きに亘って誰にも捨てられなかったのでこういうロマン溢れるお話になった訳で、何でも捨てれば良いというものではないという素敵な一例。ヴィヴィアン・マイヤーを探しての様な衝撃的な例もありますしね!この70年前の旅物語はライカのカメラだったというところが大きいですね。写ルンですだったら捨てられちゃうかな💦本作の中にもジーンが昔撮った写真を探してほしいと友人に頼まれて苦労して探しだして友人は涙を流して喜んでいたシーンが好きでした😭
★★★★★★★★★☆