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場所 瀬戸内寂聴

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父の故郷「南山」、母の故郷「多々羅川」、夫と娘を捨てて出奔した「名古屋駅」、作家としての出発点であり、男との複雑な関係も始まった「三鷹下連雀」そして「西荻窪」「野方」、ついに長年の出家願望を成就させた「本郷壱岐坂」。父、母を育み、様々な波乱を経て一人の女流作家が生み出されていった土地を、八十歳にして改めて訪ね、過去を再構築した「私小説」。野間文芸賞受賞作。

出版社からのコメント

担当編集者より
2001年1月より刊行が開始された『瀬戸内寂聴全集』(全20巻、新潮社刊)に、解説を書いていただくということで、「新潮」に連載された作品ですが、連載中から独立した読み物として非常に面白いと評判が良かったために、全集のみの収録ではもったいないということで、単行本として刊行することになりました。全集にはまた別に解説を書き下ろしていただきました。故郷はもちろん、両親の生まれたところや自分の住んだところへ足を運びその場所に立ってみると、過去に思い込んでいたことが実はそうではなかったのではとわかってくる。過去を見つめ直し、自らを遡った、自伝的な小説です。瀬戸内文学の「私小説」の集大成となる意味深い作品となりました。横尾忠則氏の斬新な装幀もお楽しみください。


Amazonより


横尾忠則さんの想定は単行本なので上の画像は違います。

源ちゃん(高橋源一郎)のラジオ番組を聞いた時に本作が寂聴先生の最高傑作だと断言していたのが印象的で、すぐに電子書籍でサンプルをダウンロードして読んだら凄く面白かったので即購入。

一言で言うととにかく面白いです。どのページを開いても映画のシーンそのものでしたね。当たり前のことを言ってすみませんが、小説家の書く文章というのはやっぱり凄いですね。どのシーンもリアルに映像が思い浮かぶようでした(知らない場所でも)。私はここに登場する場所は何処にも縁が無いので、寂聴先生と一緒に旅をさせてもらった気持ちになり、胸が一杯になりました。これ等のストーリーはついこの間まで生きていた人の生きた記録なのだと思うと万感胸に迫るものがありました😢💘

改めて言うのもなんですが、寂聴先生の人生はドラマそのものだったんだなあと。その一言につきます。お生まれの家系も因縁深くドラマチック(こんな言葉ですみませんが)。子供の頃筏渡りをして遊んでいる時、筏と筏の間に落ちて溺死しそうになったところをたまたま目撃していた人に助けられた。救われた命だったが(御本人も「死にたがり」と仰っていましたが)死にたいと思いながら99年の人生を走り抜けた。本当に凄い人生としか言葉が出ません。

個人的に特に印象深かったのは出奔の原因となった年下の恋人とのストーリー。特に夜に自転車で彼の元へ爆走する一連のシーンは胸が一杯に😭😭それと苦しいときに寂聴先生をサポートしてくれた仲が良かったお姉さんとの件。涙が出ました🙇(「姉の墓は徳島にありますが、姉とは仲が良かったので私の側にいたいだろうと分骨しました」と先日ラジオで聞いたインタビューで仰っていたのを聞いてしみじみしました)。

どの章(場所)も興味深く、寂聴先生の人生の一ページがしみじみと伝わりました。

以下本文より。共鳴しました。

人は誰も過ぎ去り、時は確実に通り過ぎてゆく。
けれども、人の足の立った場所だけは、土地の記憶をかかえたまま、いつまでも遺(のこ)りつづけてゆく様だ。



満足度
★★★★★★★★★★

お勧め度
★★★★★★★★★★

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三匹のにゃんずと地味に暮らしています。
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