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全身小説家

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1994     137分  日本

「ゆきゆきて、神軍」の原一男監督が、平成4年5月にガンで亡くなった小説家・井上光晴の晩年の5年間を追ったドキュメンタリー。映画は、彼が文学活動の実践の中心に据えた伝習所に集まった生徒たちの語るエピソードや、文壇で数少ない交友を持った埴谷雄高、瀬戸内寂聴らの証言を通して、井上光晴の文学活動を捉えるとともに、撮影開始直後に発覚したガンと闘う姿を生々しく撮り続ける。さらに、親族や近しい関係者たちの証言か
ら彼が履歴や原体験を詐称して文学的虚構を創りあげていた事実をも暴き出して、まさに“全身小説家”だった井上光晴の実像に迫る。

allcinemaより




原一男監督作品は一本しか見ていませんが(極私的エロス)非常にぶっ飛んだ内容で最も印象に残っているドキュメンタリー作品の一つです。他作品も見ようと思っていますが、長尺作品も多いのでなかなかサクッと見られませんが、本作は見やすい長さでした。

井上光晴の著作は読んだことはありませんが、寂聴先生の愛した人というところに興味がありました。本作には寂聴先生も出演しています。前記事の『場所』の中にもこの人の話が出てきて、そこから受ける印象はアクの強い人。本作を見てやっぱりそうでしたね。とにかく嘘つき。女性にはモテモテ。エネルギッシュで人生を楽しんでいる。という印象でした。『場所』で「生きることに執着している男」(と死にたがりの私)とありましたがその通りでした。闘病中「24時間でも5時間でも長生きしたい」と言っていました。66歳で亡くなっていますが寂聴先生と最後に会った時に「76なら文句無いけど66なんだよね」と言ったというエピソードがさぞかし無念だったのだろうなと。
生い立ちはお母さんに捨てられて可哀想だったけど、作家として成功した様だし、素敵な奥さんだったし、モテモテだったし、いつも楽しそうだったし、66歳は若かったけどこのドキュメンタリーを見る限りは幸せだったんじゃないかなあと思えましたが。でもやっぱり66は早いですね。

寂聴先生は面食いですね。涼太さん(年下の恋人)は知らないけど次に不倫した人もイケメンだったし井上光晴も若い頃イケメンですね。女性が気になる人だったのでしょうね。ファンだった女性が「井上さんに夢中にならない女性はいない」と言っていましたから😮

作品中にイメージ映像がありまして、井上光晴が語ったことを映像化したものでした。それが幻想的でとても良かったです。特に初恋の年上の美少女に纏わる話。これも嘘らしいですが幻想的で悲しい結末。余韻が残る話でした。流石作家です。


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後ろの方は光晴さんの奥さまです。
得度後も友人だった光晴さんと寂聴先生。
ふたりの過去を知りながらおおらかに接した奥さま。
大人の人たち。

余談ですが先日寂聴先生の生前の声をラジオで聞いたのですが、その時のテーマが死でした。アナウンサーの「失礼な質問ですが御自身の死について思われることはありますか」との質問に寂聴先生は「私は小説家だから野垂れ死にしたい。無理だと思うけど」と仰っていました。それを聞いた時に流石に波瀾万丈の人生を送った寂聴先生だなと。痺れました。昔は野垂れ死にって普通だったのですよね。今は流石に無理ですね。

冒頭の画像は1992年の新年会で井上光晴の自宅に親しい人々が集い、その客人たちを玄関先で見送る姿です。その約4ヶ月後に亡くなりました。来年で没後30年です。30年前でも人が死にゆく姿を見るのは切ないですね。生き生きとしているから余計。
今頃寂聴先生とあの世で再会してお酒でも呑んでいるのでしょうか。随分遅かったね。そうねえ。とか言いながら。


『水俣曼荼羅』観たいなあ。キネ旬で上映されるみたいだけど、キネ旬遠いし長尺(6時間)だから体力がなあ(  ̄- ̄)でも観たいなあ。キネ旬の隣に住みたい😭



★★★★★★★★


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