すぐ死ぬんだから 内館牧子
- 2022/05/13
- 22:35

終活なんて一切しない。それより今を楽しまなきゃ。
78歳の忍ハナは、60代まではまったく身の回りをかまわなかった。だがある日、実年齢より上に見られて目が覚める。「人は中身よりまず外見を磨かねば」と。仲のいい夫と経営してきた酒屋は息子夫婦に譲っているが、問題は息子の嫁である。自分に手をかけず、貧乏くさくて人前に出せたものではない。それだけが不満の幸せな老後だ。ところが夫が倒れたことから、思いがけない裏を知ることになる――。
「定年」小説『終わった人』に続いて30万部超の大ベストセラーとなった人生100年時代の痛快「終活」小説!
78歳の忍ハナは、60代まではまったく身の回りをかまわなかった。だがある日、実年齢より上に見られて目が覚める。「人は中身よりまず外見を磨かねば」と。仲のいい夫と経営してきた酒屋は息子夫婦に譲っているが、問題は息子の嫁である。自分に手をかけず、貧乏くさくて人前に出せたものではない。それだけが不満の幸せな老後だ。ところが夫が倒れたことから、思いがけない裏を知ることになる――。
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Amazonより
とても面白いというレビューが多かったので読んでみました。最初の方は2ページに一度は爆笑しながら読んでいました。確かに笑える。しかし。
以下ネタバレになるので御注意ください。
☆★☆★☆ネタバレ注意★☆★☆
夫が突然死後愛人と隠し子が発覚。ハナとその家族の彼らに対してのいびりが酷くて読んでいて辛かったです。確かにハナと家族は被害者ですが一言も反論せず頭を下げ続ける人たちに対して酷い言葉でかなりきつくいびる(2号、妾など今時誰も使わない言葉を使っていましたね。吉野家の一件を思い出してしまいました)ハナと家族はかなり性格悪いと思いました。元々ハナは性格が悪いですね。安い帽子を被りリュックを背負って歩く高齢の人たちを「虫に見える」と言ったり。かつて元朝青龍が舞の海さんのことを「(小さくて)虫みたい」と発言したのを思い出し腹が立ちました。常識のある人はしない発言です。ハナ性格悪すぎです。夫の不倫に関しては被害者なので訴えるなり文句を言うなりしていいと思いますが発言の内容が酷かったですね。
ハナはファッションや美容にお金をかけていた様ですが(いつもネイルをしてエステにも行き)そのお金が何処にあったのかというのも疑問です。何とか家業の酒屋を切り盛りしてきた訳で。羽振りが良い要素は何処にも無いのですが。不思議だなあ。この間ドラマの第1話を見た『今度生まれたら』(こちらも内舘さんの老後小説)の夏江はエリートと結婚したけど、老後の今スーパーでパートをしているし車も軽自動車。あっちの方がリアリティがあったなあ。ハナの長男の同級生たちが偏差値の低い学校を出ているが、放送局のワシントン支局長や老舗ホテルの副支配人になっているのも普通は有り得ない話。
話の展開もリアリティが無かったなあ。岩太郎はあれだけ自分を罵倒した人間に大切な人生相談をするか?有り得ないなあ。そしてラストの良い感じも何だかなあ。本当に御都合主義な展開。まあ自殺しようとする話などよりは遥かにいいけれどもすっきりしなかった。
でもハナみたいな人いますね。とにかく外見に拘る。人前でくたびれた姿は意地でも見せない。別にいいと思いますが外見にかまわない人への偏見はリスペクトできない。人の価値観はそれぞれだから。先日見た「こんなところに一軒家」ですっけ?山の中の一軒家の番組。そこで山の中に暮らす年配の御婦人を所さんが「素敵な人」と一言言いました。私もそう思いました。別にお洒落な格好はしてないけど(ごく普通です)表情や言葉や立ち居振舞いがとっても素敵なんです。その人の「人となり」から滲み出るものでした。お洒落も大事じゃないとは言わないけど個人的には清潔であれば良いと思う。人間はやっぱり中身だと私は思う。着飾ってもハナみたいに性格の悪さは隠せないから。
この話を読んで思い出した映画があります。魂萌え!です。
これも夫が急死して愛人が発覚してからの妻(敏子)の失意と再生を描いたものです。こちらの夫も長らく愛人との暮らしがありました。こちらの夫の愛人が敏子に向かって「知らないということは罪なことなんですよ」等とのたまう(不倫していた当人が言う台詞じゃないでしょ)非常にふてぶてしい女で家族にひたすら頭を下げ続けていたハナの夫の愛人とは対照的でしたけれども。因みに敏子は映画館の映写技師として新たな人生を踏み出すのでしたが、今のデジタル時代には無理な話なので何とも寂しく思います。
蛇足ですが敏子さん役の風吹さんは『今度生まれたら』のドラマにも出ていますし、魂萌え!で敏子の夫の愛人役だった三田佳子さんは、私は見ていませんが本作(すぐ死ぬんだから)のドラマでハナ役を演じられていた様ですね。みなさん本当に息の長い御活躍で素晴らしい限りです。
それともう一つ思い出した話がありました。以前人生相談の掲示板で読んだ話です。夫がまだ若くして病気で亡くなった後に、ご主人とつきあっていましたと言う女性が現れたという話です。しかも複数。これはつまり自分の余生を悟った夫が死ぬまでにやれるだけやろう(あからさまな表現ですが😳)と決め、それを実行したということだったらしいです。コメントの中には病気だった人がしたこととは思えない(できるとは思えない)というものもありました。普通に考えればそうなのですが、人の執念というものはそういうことができるのかもしれないですね。でも夫としても人としても最低だし、飛ぶ鳥跡を濁しまくって気にせずということですね。奥さんは可哀想すぎます。夫は天国行けないんじゃないかな😕これは「もう一つの家庭」とは違う話ですが、裏の顔という点で思い出しました。
満足度★★
お勧め度
個人的にはお勧めしません。