白い牛のバラッド
- 2022/05/24
- 10:51

2020 105分
イラン/フランス
今も死刑制度が残るイランを舞台に、1年前に死刑に処せられた夫が冤罪だったと判明した妻が、社会の不条理に翻弄されながらも力強く立ち向かっていく姿を緊張感あふれる筆致で描いた社会派サスペンス。主演は監督も兼任したマリヤム・モガッダム。共同監督にベタシュ・サナイハ。1年前に夫が殺人の罪で死刑に処せれられたミナ。幼い娘を抱え、未亡人のシングルマザーとして辛い日々を送っていた。そんなある日、裁判所から真犯人は別にいたことが判明したと告げられる。納得できずに担当判事の謝罪を求めるも、まったく取り合ってもらえないミナ。絶望と無力感に打ちひしがれる彼女の前に、夫の旧友だという男性レザが現れ、母娘に優しく手を差し伸べてくれるのだったが…。
allcinemaより
U-NEXTで見かけてどうしても気になり、770ポイントも使って見てしまいましたが(普段は399ポイント《これがU-NEXTの有料単品価格の所謂定価です》以上の作品は見ません)好みだったので見て良かったです。
アスガー・ファルファーディー系の社会派作品でした。その手が好きな方にはきっとヒットするでしょう。大変重たい題材ですが。
☆★☆ネタバレ注意★☆★
一番印象に残っているのは以下の会話です。レザと相手の男性は同僚と思われます。
男性「判事全員が同じ結論ならそれは神の御意志だ。人には皆権利がある。死刑はその一つだ」
レザ「なぜ断言できる?」
男性「神は過ちは起こさない」
考えさせられる会話です。過ちを犯すのは人間でしょう。神のせいにしてはいけないと私は思う。
もう一つ印象に残っているのはミナの住居(アパート)を訪ねてきたレザを家へ上げるのを見ていた大家が、そのことを理由にミナを退去させたこと。見知らぬ男性だからというだけでです。そういう社会なのですね。ミナが新しい住居を探そうと不動産屋に行くと「未亡人は(大家に)好まれない」と言われる。このことだけでもイランで女性が生き辛いのが分かります。
レザはミナと娘に、ミナは娘に、本当のことを言えないのもこの物語のポイントでした。もし言えているなら事態は変わっている。人間の弱さですね。でも私がミナなら果たして娘に真実を言えるのだろうか。
印象的な冒頭の白い牛とそれに対峙する黒い人々のシーンに象徴されるコーランの雌牛の章、ネットで読んでみましたが当然素人に理解できるものではない。詳しい人に分かりやすく解説して欲しいと思いました。
本作は宗教的な部分やイランの慣習は別として、ストーリー自体は無駄な部分が無く分かりやすかったです。画面もいつも固定で見易いし懲りすぎていて理解不能の様なシーンは皆無。堅実な監督だと思います。本作が本国では上映禁止というところが一番の問題なのではないでしょうか。
結末は解釈が分かれるのかもしれませんが(?)私はこれは赦しの物語りだと解釈しました。個人的に気になったのはレザのその後です。ミナは子供を育てなければならないので大丈夫と思いますが、レザは廃人になりそうな気がしました。頑張って生きて欲しいです。
★★★★★★★★