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泥の河

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1981       105分  日本

第13回太宰治賞受賞の宮本輝の同名小説を、これが監督デビューとなる小栗康平が映画化。河口の食堂に住む少年と対岸に繋がれた船で売春を営む母を持つ姉弟との出会いと別れを軸に、社会の底辺で生きる人々の姿をきめ細やかに描いた人間ドラマ。日本が高度成長期を迎えようとしていた昭和31年。大阪・安治川の河口で食堂を営む板倉晋平の息子・信雄は、ある日、対岸に繋がれているみすぼらしい船に住む姉弟と知り合う。その船には夜近づいちゃいけないと父からは言われていた……。

allcinemaより


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本作はストーリーは知っていましたが、シーンが断片的にしか記憶に無く。一度きちんと見なければとずっと思っていてやっと見ました。見ていて記憶が甦り、蟹の処刑場面がトラウマになっていて、生き物をこんな風に扱う映画は見たくないと思ったこと、芦屋雁之介の事故の場面が衝撃だったこと等を思い出しました。

蟹の場面は今でも大ショックでしたが(本当にやめて欲しい)、それ以外は素晴らしく、傑作と思いました。一言で言うと切なかった😢原作は未読ですが、本作は宮本輝の幼少期がモチーフになっているそうですね。本作のレビューを読んでいたら、川の側で育ったという方のものがありました。きっちゃん一家の様な船で暮らす人びとを見ていたが、彼らは丘の人々とは交わらなかったとありました。それを見てやはりきっちゃん姉弟と信雄の交流は特別なものだったのだなと。私は川の側で暮らしたことが無く、この映画で見られるような風景や人々は未知の世界なのでとても興味深いものでした。

印象に残っているシーンは多々ありますが、信雄のお父さんが「こんなことなら戦争で死んでいた方が良かったと思ってる人沢山いるだろうなあ」という台詞(お父さんは訛りがあったので(京都弁?)正確な台詞ではありませんが)。それときっちゃんとお姉ちゃんが信雄の家に招かれている時に下品な客が子供の前で非常識なことを言い、信雄のお父さんが本気で怒り、客に帰ってくれと言ったこと。感動しました。他にはお化け鯉と川の底から沸々と湧き上がってくる泡。川に落ちて上がってこなかったお爺さん。きっちゃんのお母さんが信雄を見ながら言った「男前やなあ」他多数。上の画像のきっちゃんと信雄が橋の上で雨に打たれているシーンも印象的ですね。

子供たちは三人とも素晴らしかったですが、他の役者さんも皆印象的です。特に田村高広さんの演技に感動しました。存在は知っていましたが、あまり印象に残っておらず。名優だったんだなあと改めて知りました。


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お父さんとは違うからと頑なに二代目坂東妻三郎を襲名しなかったという田村さん。


奥さん役の藤田さんも良かったですね。今藤田さん出演のドラマを見ています。「今度生まれたら」という内館牧子さん原作の老後小説で、主演の夏江(松坂慶子さん)のお姉さん役で出ており、幸せだった夫婦が夫の老いらくの恋の末、70代で熟年離婚という悲劇に見舞われる展開となっています。泥の河では家庭のある人を略奪婚した役だったので、40年後に丁度逆の役どころをやっているというのも何とも言えません(夫のお相手の女性は若い人ではなくて同級生というのが尚悲惨😨)。お元気で現役で俳優を続けられているのは何よりですね。


私は本作を見て『洲崎パラダイス赤信号』を思い出しました。共に傑作ですね。泥の河は子供の視点のお話で洲崎は大人の話ですが、共通点がありました。場所は違いますが丁度同じ時代のお話。戦争は終わって10年経ったけれども、まだ手探りで何とか生活している人たちが沢山いた。春を売って生きていた(いる)女性。赤線廃止の頃。一番の共通点は共に川縁の飲食店が基点となっていました。どちらの家にも男の子がいる。夫の過去に問題があり、三角関係の図式がある(形は違うけど)。偶然ですが両作共に水面のショットから始まるんです。絵は対照的ですが。

何を言いたいかと言うと、大変な時代を場末の川の近く(上)で何とか頑張って生きていた人たちの人間模様で、共に忘れられない素晴らしい作品であるというそれだけですが。


この映画を今こそ見る❗と思ったきっかけは、たまたま聞いたラジオで某映画監督が泥の河の話をしていたのです。作り手に初めて共感できた映画が泥の河であったと。その時の話で、きっちゃんのポケットの穴からお金が落ちてしまったネタは知らなかったので、そのネタバレは残念ではありましたが💦しかしそれらの話を聞いていたら無性に見たくなったのでした。因みにその人とはPLAN75の監督早川千絵さんです。アナウンサーの今後はどんな作品を作りたいですか?の問いに、また泥の河の子供の視点に戻りたいですかね。の様なことを言っていました。蛇足ですがその同じ時間にたまたま別のラジオ局ではトム・クルーズ主演のあの大ヒット作について熱心に語られていました。映画というのは本当に裾野の広いものだなと改めて思いました。

話があちこち行きましたが😅名作とはこういう作品を言うと思いました。


★★★★★★★★


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