去年マリエンバートで
- 2022/06/19
- 11:39

1960 94分
フランス・イタリア
アンチ・ロマンの旗手ロブ=グリエが脚本を手がけた、観ている間は理解した気にさせて観終わって思い起こそうとするとまるで掴めなくなるという難物である。男が、整然とシンメトリックに設計された庭を持つ城館にまぎれこむ。そこでは社交界のお歴々が集まり、退屈なパーティに興じている。男は誰の気にもかけられずに館内を歩き回り、女を見つける。女とは去年に会っていた、マリエンバートで……。女にはその記憶がないが、男に迫られるうち、過去と現在の境が消えて、男の言うような記憶を作り上げていた。二人は愛し合い、一年の後、ここで会う約束をした、と。男にG・アルベルタッツィ、女に氷の美貌のD・セイリグ、驚嘆の巧緻なカメラは、最近ではグリーナウェイ作品でも完璧に無機的な映像設計を見せるサシャ・ヴィエルニ。フラッシュバックの幻惑は、監督レネの自家薬籠中のもの。ようこそ、狂うほどの醒めた白日夢の世界へ。
allcinemaより
後ろ姿は監督のアラン・レネです。
「去年君とここで『去年マリエンバートで』を観たんだ」
『アニー・ホール』でアルヴィが街中で切なく呟くシーンがとても印象的でした。それ以前からずっと本作を観たかったのですが、なかなか見れなくて。最近リマスターされたからか、ついにサブスクに登場したので(ずっと無かった)やっと見ました。
こういう話だとは思っていなかったので意外でした。アニー・ホール程センチメンタルではなくとも、普通の男女のお話(結末がびっくりな)かと思っていたら全く違うのですね。とても前衛的で美しさに拘った作品ということは分かりました。が、とても退屈でした。久しぶりに時間が進むのがとても遅く感じました。何度も繰り返される台詞や神経を逆撫でするパイプオルガンの音もそういう作品だというのは分かるけど、不穏なので好きじゃなかった。色々と拘っているということは分かりますが、ぶっちゃけ面白くない。贅沢に着飾り、意味のないことを話し、面白くなさそうなゲームを繰り返し(あのゲームは演出として意味を成しているのは分かっています)。この人たち暇なんだなと思ってしまいました。要するに非現実的世界の優雅で暇な人たち。それでも見ている時は退屈でしたが、見終わった時に何故か「なかなか面白かった☺️」と思ったのでした。
思うにこの中の誰かは死んでいますよね?主演の二人とも死んでいるのかも。だから話があやふやで永遠に未来と過去と現在をホテルや庭園やマリエンバートを彷徨っているのかも。でもこの作品の世界観だと、思い込みで未来は変えられる様なのでそこは希望を持ちました。
ストーリーは退屈でしたが、絵は美しかったし面白かったです。アラン・レネの審美眼に敵ったデルフィーヌ・セイリグの美貌(マネキンみたい)、シャネルの衣装、おそらくジュエリーもシャネルですかね?印象的でした。それをモノクロで見るというのがいいですね。シャンデリアの様なイヤリングがキラキラと照明に輝き、彼女の顔の真ん中に陰影があるシーンが印象に残っています。画面全体が庭園とホテルで端にとても小さな二人がいるシーンなど構図も面白かった。鏡を使ったシーンや俯瞰のシーンも印象的でした。あと女性の夫役の人が背が高くて雰囲気がモンスターみたいだった。主演の俳優より印象が強かった。
個人的には俗っぽいと表現している人もいますが『ヒロシマ・モナムール』の方がずっと好きですね。生身の男と女の話で、彼らは生きている(彼らの心も戦争で死んでいる部分もあるかもしれませんが、彼らには血が通っている。24時間でも彼らは現実としてそこにいる)。ずっと会話を続けているところは同じですが、シチュエーション的には真逆でしたね。
個人的にはタイプの作品ではありませんでしたが、時を経ても伝説であり続ける作品である由縁は理解できたのではないかと思います。アラン・レネは永遠に大好きです。『ヒロシマ・モナムール』を作ってくれただけで感謝しかありません🙏
とりあえずロブ=グリエ作品を勉強しようと思いました。
★★★★★