青の時代 安西水丸
- 2022/10/02
- 22:04
安西水丸展で買ってきた『青の時代』を読みました。ガロに掲載された漫画の作品集です。私はそれさへも知らず、展覧会で見たこの少年があまりにも可愛くて一目惚れし、
売店で見かけて、あの男の子だ👀💘と購入しました。
この少年(のぼる君)は水丸さん自身ということです。
ガロの存在は知っていましたが、手に取ったことはありませんでした。初めて作品を見ることができて嬉しいです。
13作品が収められています。一言で言うと郷愁が凝縮されていました。どの作品にも。最後に収められている嵐山光三郎原作の「怪人二重面相の墓」前後編だけ趣が違いますが(これだけ海辺の街が舞台ではない)、一番深い哀しみに満ちていたのはこの作品かもしれません。他はのぼる少年(水丸さん)の実体験がベースになっている作品で、お姉さんがお嫁に行く時の寂しさ、まだ幼いときに逝ってしまったお父さんへの想い、町のはぐれ者や流れ者(にのぼる少年はひかれたそうです)との思い出…が個人的には印象深く、お姉さんがお嫁に行く時に、屋根の上で行列を見送り、一人涙するのぼる少年を見ていたら泣けてきました😢
御本人もインタビューで触れていますが、のぼる少年の「普通の子供よりませていて、ずるい」キャラクターが興味深かったです。街の流れ者のおじさんに着ていた水着を揶揄されて、「人の服装には干渉しないでください」と言うシーンが印象的です。子供の言う台詞じゃないですよね😆
水丸さんは1942年生まれなので、のぼる少年のお話は40年代から50年代ですよね。その頃の千倉の風景や風習を垣間見ることができたのも素晴らしい経験でした。
有り難かったのは御本人のインタビューが収載されていたことです。漫画を描く様になった経緯や、ガロに描いていた時のエピソード、水丸さんの心象風景について知ることができて良かったです。印象的だったお話は「全体的に詩のような展開が好きで、本当にやりたいことは無意味な見開きのようなページ。ガロだからやらせてもらえたこと。他の雑誌だったら絶対できなかった。」「「君の仕事は『青の時代』を越えるものはない、絵も何もかもあれが一番良かった」とよく言われる。」「沢山の姉たち(五人)の末っ子で育っているから、僕にとっての女の人は皆年上。昔から少女愛とか年下に対する興味がない。」(作品にも少女は一人も登場せず、いつも妖艶な女性が登場することに納得。裏表紙にも👀)など。勉強になりました。
序文 安西カオリ、解説 嵐山光三郎の内容も感慨深いです。
展覧会を見て、水丸さんは人生をとても楽しんでいた人だったのだという印象が大きかったのですが、そのルーツにある、のぼる少年の『青の時代』を本作を通して知ることができて良かったです。少年時代のことを書いた小説もあるのですね。機会があったら読んでみたいです。それにしても多彩な人だったんだなあと。良いものを見せてもらいました。