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義血侠血 泉鏡花

明治後期から昭和初期に活躍した小説家、泉鏡花の短編小説。初出は「読売新聞」[1894(明治27)年]。

行きがかりの縁により、村越欣弥に学資を与える水芸人・白糸。しかし、仕送りに窮して許されざる犯罪に手を染める。

明治28年、新演劇・川上音二郎一座が「滝の白糸」として浅草座で上演、好評を博す。

kindleの解説より


WOWOWのガイド誌でこの小説を元にした舞台が紹介されていたのを見てこれ読まなくちゃ!と思っていつもの様に青空文庫のkindle版で2回続けて読みました


『外科室』の前年の作品なんですねー
今作は『外科室』や『夜行巡査』(未読)と共に初期の鏡花の観念小説の代表作だそうです
知りませんでしたー(^^;


何も事前知識を持たずに(白糸と金さんの存在も知らず)読んだので真っ白で入っていけてとても楽しめました
独特の美学が貫かれる鏡花ワールド全快でいつものようにうっとりと浸ることができました

悲しい結末に読了後はやっぱり涙が出ました
今回は結構長めに泣きました(;_;)

☆ネタばれ注意☆

鏡花の描写力は空気感が伝わるのでいつも一つ一つのシーンをくっきりと脳裏に描くことができます
仕事の前に膝の間に犬を置いて犬の頭を撫でながら本を読んでいる金さん、素顔に紅、将棋の駒を大型に散らした散らした浴衣、素足に吾妻下駄の粋な白糸、無防備に橋の上で眠る金さん(しかし寝顔は凛々しい)、そんな金さんの寝顔を繁々見つめたあとに慌てて自分が纏っていた毛布を渠にかける白糸
一つ一つが二人の人となりをピンポイントで伝えていますよね
全てがまるで映画を見ている様です
だから鏡花は病みつきになってしまうんですよね


今作は外科室と共通点を感じました

ふとした出逢いで運命が変わる、プラトニックな関係、皮肉な運命、衝撃のラスト(悲劇的結末(T_T)。。。ある意味ハッピーエンディングなんですが)。。。が鏡花独特の美学で綴られています

ただこちらの方は犯罪がらみで殺人シーンがあるので外科室よりずいぶん血生臭いです
そこはちょっと驚きました(@_@)
殺人シーンでは師匠の尾崎紅葉の金色夜叉の貫一の夢のシーンを思い出してしまいました
やっぱり刃物が出てきて恐ろしいことになるのですがでもあれは夢、白糸のは現実です(><)


クライマックスの金さんが恩人の白糸を裁くという設定が辛すぎるけどm(__)m(ここも外科室で医師高峰が愛する伯爵夫人の胸を麻酔無しで割くシーンと重なった。辛すぎる(T_T))この怒濤のクライマックスから衝撃のラストがとてもインパクトがありやっぱり鏡花は超劇的だなあと思いました



☆今作で私が特に印象に残ったシーン☆

金さんが白糸を馬に乗せて激走するシーン
明治時代的粋な白馬の王子様(;o;)


白糸と金さんが橋の上で二人でしみじみ語るシーン

「そりゃあ、もうだれだって浮き世ですよ。」
「うむ、まあ、浮き世とあきらめておくのだ。」

いつの時代も生きるのは辛いね(TへT)
特にこの時代はそうだったのかも

金さんと白糸は何処か似た者同士だった様に思う
二人とも厳しい現実を生きていたけれど汚れが無く真っ直ぐな心を持っていた

その真っ直ぐな心が裏目に出たということなのかなあ
人生って悲しい(T-T)



今作は何度も舞台化、映画化(ドラマ化も)されている様ですが内容はいずれも舞台や映画用に脚色されている様ですね
映画化は今まで六回されてる様ですがどの作品も古いからなのか有名ではないからなのか??映画サイトで検索してもあまり情報がないのが残念(涙)
allcinemaでは最後に映画化された1956年版の資料だけがありました
その時は白糸は若尾文子さんだった様ですがイメージ的には合ってるなあと思いました
溝口健二監督のサイレント作品はDVD化されてる様なのでいつか見てみたいです

あと私は今日初めて知りましたが鏡花の作品の現代語訳版というものが出ているのですね
とても読みやすそうですが読む気になりません
大変でもやっぱり昔の言葉で読みたいです



かみえる的満足度(10☆満点)
☆☆☆☆☆☆☆☆

コメント

No title

りゅうちゃん

☆満点じゃなくて8つです(笑)

満点じゃなかったのはちょっと強引だったかなあと思ったのと血生臭かったからです

No title

満点の満足度!!

かなり良い作品なんですね!!

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kamieru

Author:kamieru
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三匹のにゃんずと地味に暮らしています。
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