2011 105分 韓国
直木賞作家・井上荒野の短編小説『帰れない猫』を「アドリブ・ナイト」「素晴らしい一日」のイ・ユンギ監督が映画化。離婚を決めたカップルの最後の一日を切なくも淡々とした筆致で綴る大人のラブ・ストーリー。出演は「レイトオータム」のヒョンビンと「サイボーグでも大丈夫」のイム・スジョン。
空港へ向かう車の中でたわいない会話を重ねる2人は、結婚して5年になる夫婦。ところが、妻が突然別れを切り出す。彼女は他に好きな人ができて、家を出て行くことを決意したのだ。やがて別れの日を迎えた2人。外は朝から土砂降りの雨。そんな中、夫は妻の荷造りを手伝い、2人の思い出のレストランも予約し、彼女のために美味しいコーヒーを淹れてあげる。最後まで優しい夫に、なぜ私を責めないのと苛立つ妻だったが…。
この監督さんの作品初めて見ました
全編淡々とした雰囲気なのでそこが好みが分かれるでしょうね
起伏に富んだ作品を好む人にはお勧め致しません(^^;
私はこういう雰囲気好きです
なんだかカッコいい夫だなあと思いながら見ていたらこの人は『レイトオータム』のヒョンビンだと気づいた

(私は俳優や監督の名前をなかなか覚えずこの人の名前も覚えていなかったがレイトオータムは好きな作品だったので顔は覚えていた)

この人本当に二枚目と思う
レイトオータムではジゴロの役をやっていて情婦の夫に追われる様なヤバい役だったけど少年の様なところのある憎めない役柄だった
ジゴロ役っていうのはこういういい男じゃないとだよねーこの人ピッタリだよねーハンサムだし

と思いながら見ていた
立ってるだけで絵になります
韓流の俳優はあまり知らないけど今まで見た人の中でいちばん素敵だと思う
知名度はイマイチの様だけど?
一方のイム・スジョンさんは『ハピネス』の余命幾ばくも無い状態で不実な恋人を死ぬまで愛しぬく姿が忘れられません
非常に可憐で繊細な雰囲気の人ですが根底に芯が一本通った強さを持っているというイメージがあって『ハピネス』と今作両方の役柄にそれを感じました
この様な素敵な二人なので雰囲気のある映画でしたね
さてこの作品。冒頭の車での会話のシーンを除き全編雨です
しかも大雨
(私は雨大好き人間なのでこのシチュエーションに馴染みました笑)
今日は妻が出ていく日。つまり二人が一緒に過ごす最後の日です
そんな日に大雨!
この大雨とそれによる影響が何気なく二人の心の機微を垣間見せていきます
『雨降って地固まる』という諺がありますが二人の場合はどうなのでしょうか?
二人を見ていると私はとにかく何故こういう素晴らしい夫~(イケメン。裕福。優しい。他に女性の影無し。パスタ作りの名人!美味しいコーヒーを淹れてくれる!完璧ですわ~(T_T)~と別れるのかな~有り得ないな~と思ってしまいましたが(殆どの女性はそう思うのではと)しかし二人の違いを象徴する様な印象的なエピソードがありました
妻が何故私を怒らないのかというシーンがそれですが私が印象的だったのはそこじゃなくて二人が住んでいる家~(これが又素晴らしく素敵な家。物語を見てるよりこの家を見てる方が楽しかったくらい!と言うのは冗談だけど逃げた猫を探して二人の家に来た近隣の夫妻の妻の方が「若くしてここに住んでいるなんて成功したのね。」という台詞にここが高級住宅街であることが分かる。つまり二人はセレブ系らしい)~の二階の窓が開いているのを妻が閉めようとしても閉まらなくて後で夫に閉めてくれる様に頼む。二人で窓のところに行くと夫はフリーズしている窓を一度開けてから閉め直すと難なく閉まった。
夫が「コツがあるんだ。慣れると簡単なんだけど。(君も)そろそろ慣れていい頃なんだけどなぁ。」と言い妻は「私はやっぱり慣れないのね。」みたいなことを言っていた
ここに妻の頑なさ(不器用さ)と夫の柔軟さの対比が見て取れた
だから妻は別れを決意したんだろうなと
自分の気持ちに妥協できないから
あともう一つ印象的だったシーンは妻が夕飯前にお茶しながらマフィンを食べているシーン
夫に勧めるも夕食前だから要らないと断る夫に「私だけが食べるなんて私が可哀想だからあなたも食べるの。」という妻に夫はマフィンを頬張り笑顔で美味しいと言う
その一連の夫の様子が嫌味が無くまぁどこまでも優しい人だなと
でもこういうどこまでも受け身のところが妻はじれったいらしい(-_-;)
これって傍から見てるとこの妻は贅沢すぎるけど(こんな完璧な夫一体どこが不満なのかなぁと殆どの女性は思うのではないかと)彼女には彼女の気持ちがある訳ですよね
夫婦というのは難しいものですね
☆☆ネタバレ注意☆☆
結局二人がこれから夕飯を食べるというところで物語が終わり決定的なシーンが無いまま終わるので「で?これってどうなるの?」と思ってしまった
でもタイトルのcome rain,come shineと
「別れから始まる男と女の物語・・・」というキャッチコピーからすると二人は別れないものと思われる。。。
やっぱり『雨降って地固まる』らしい?
でも。。。妻の性格を思うとどうもこの二人はこの状況が続くように思われる
もし別れなかったとしても一度は別れると決心をしたくらいだからおそらくは完全に地が固まるとは思えないので結局は今の微妙な状況が続くのではないのかと。。。
でもこの二人はお互いが好きなので完全に別れることはないのかなと?
う~んよく分からないなあ😓
やっぱり男と女は不思議ですね
トルコ映画にClimates(邦題うつろいの季節(とき)というのがあるのですがそれを思い出しました
邦題のごとく不安定な男女の微妙な機微を描いています
Climatesとは私の手持ちの辞書には「(ある土地の年間を通じての)気候」とあります
『Climates』は気候、『愛してる、愛してない』はほぼ一日の話なので気候と言うよりWeather(天気)ですが(でも倦怠期という意味では気候とも言えるのかも)それが両作品ともストーリーと映像のポイントにもなっているところがリンクしました
話ついでに😊
雨と言えば映画ファンの方はどなたも雨と聞くと雨が印象的な映画、シーン、サントラなどがいくつか頭に浮かぶと思いますが皆さんは最初に多い浮かぶものは何でしょうか?
私はデニーロとストリープの『恋におちて』の雨の夜の別れのシーンです
フランク(デニーロ)がテキサスに発つ夜にモリー(ストリープ)の家に電話をかけてきて挨拶のあと今夜発つことを告げ一目でいいから会いたいと懇願する
(フランクが電話をかけてきた頃に雷が鳴り始めこの会話のあたりで雨音が激しくなる)
モリーは後ろ髪引かれながらも「行けないわ。向うに行っても元気で。さようなら。」と電話を切る
モリーの夫が「これで終わったな。」とモリーに言う
モリーは受話器を置いて間もなく(本当に数秒で)靴とバッグを掴み走り出し階段を駆け下り止める夫を振り切り雨の中に飛び出していく
ここから後雨の中をブッ飛ばしてガンガン追い抜きしながら愛する人に一目会う為に一心不乱に進むモリーの様が秀逸でこの一連のシーンは何回見ても感動するしこの作品中の白眉と思う(この映画は初めから終わりまで全て素晴らしいけど特に感動的です)
このシーンも雨無しではあり得ません
丁度そのシーンがありました
さっきDVDで見て感動し今これで見て又感動

他にも雨と聞くと色々思い出すけど例えば『雨の訪問者』のあのサイコの変態?が頭に浮かびとても怖い

『シェルブールの雨傘』の色とりどりの傘がパッと開くのを上から映したシーンがとても素敵
近年に観たものでは『言の葉の庭』の雨の描写が凄く素敵
(特に雨が部屋の壁に映ってうねっているところ)
『ナチュラル・セレクション』で二人がバイクに乗っている時に降られて寒くて震えながら二人で抱き合って温めあうシーンが良かった
等々。。。
話が長くなりましたが男女の微妙な空気感と雨の日が好きな方はぜひどうぞ

TV(BS)にて
★★★★★★☆